大手3キャリアの第3四半期決算が出そろった。全体的な傾向としては、各社とも増収増益が続いている。シンプルにいえば、その理由は収入が増え、出費であるコストを抑えられているからだ。光回線や上位レイヤーのサービスを使うユーザーが増えているのに対し、総務省のガイドラインの影響を受け、新規契約やMNPは減少しているため、いわゆる獲得コストは減少している。
一方で、MVNOやY!mobileなどのサブブランドは、引き続き堅調にユーザー数を増やしており、大手キャリアからの流出も多くなった。その結果、大手3キャリア同士で見たときの競争の構造が、“ユーザーの獲得”よりも“いかに流出を防ぐか”に変わりつつある。解約率が以前より低下しているのはそのためで、この指標の重要度も増しているというわけだ。この観点から、3社の決算を読み解いていこう。
「解約率は0.57%で、引き続き低い水準で推移している」――こう語るのは、ドコモの吉澤和弘社長だ。MVNOやY!mobileなどのサブブランドから受ける影響も「イメージとしては横ばい」で、想定していたよりも、流出は少なかったという。対MVNO、対サブブランドでは「いろいろな施策をやってきた」ことが功を奏した格好だ。
「例えば、フィーチャーフォンからY!mobileのスマートフォンに替える方が多いが、そういったものには『はじめてスマホ割』などのキャンペーンを入れ、ドコモの中でスマホに替えていただくことをやっている。カケホーダイライトへの『データSパック』適用も、1つの対抗策。ドコモを使い続けていただく施策については、手を打ってきた」
auの解約率が0.78%、ソフトバンクが1.25%(携帯電話に限ると0.89%)であることを考えると、ドコモの0.57%は非常に低い数値であることが分かる。ユーザー還元という点では、吉澤氏の社長就任前から、いわゆる新料金プランを軸に、「シェアパック5」を導入したり、「ずっとドコモ割」を拡充したり、「子育て応援プログラム」を導入したりと、さまざま角度から強化を図ってきた。吉澤氏は、「お客さま還元という意味では、さらに要望をしっかり踏まえながら、継続検討していく」と、手を緩めない方針だ。
2016年4月に始まったガイドラインも、ドコモにとっては追い風になっている面がある。吉澤氏も「キャリア間の行き来が、少し沈静化しているのは、1つの理由としてある」とこれを認める。一方で、端末の販売台数に関しては、上記の施策も功を奏し、大きな影響は受けていないようだ。吉澤氏は、理由を次のように語る。
「スマートフォンとタブレットは、第1四半期にタスクフォースの影響がかなりあったが、第2四半期、第3四半期になると、フィーチャーフォンがたくさん残っているところに、『はじめてスマホ割』があり、スマートフォンを2年、3年使っている人の取り換え(買い替え)需要もかなりあった。iPhoneなど新しい商品も出ているため、スマートフォンやタブレットは、対前年でそん色ないところまできている」
データもそれを裏付ける。第3四半期のスマートフォンとタブレット利用数は3493万になり、前年同期比で10%上がった。これは、フィーチャーフォンからの移行が進んだためだ。同時に、端末販売台数は第3四半期で669万を記録しており、前年同期の648万4000よりも、数自体は増えている。内訳を見ると、スマートフォン、タブレットも390万6000から398万8000へと伸びを示している。機種変更が多いのは、それだけドコモ内にユーザーがとどまっている証拠でもある。
一方でユーザー数は、MVNOなどの増分が寄与して、大幅な伸びを示した。第3四半期の純増数は、64万5000。前年同期比より減ってはいるものの、転入超過の状況は続いている。ユーザー還元を矢継ぎ早に実施して守りを固めつつ、料金面で安いMVNOで他社からユーザーを奪い取ってくるのが、今のドコモの基本戦略であり、強さといえるだろう。
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