東日本大震災の復興政策を担う復興庁が、発足してから5年を迎えた。21年3月までに廃止されることになっており、折り返し点を過ぎた。

 津波被災地では公営住宅や道路といったインフラ整備のゴールが見えつつあるが、コミュニティーや産業の再生は思うように進んでいない。避難指示が少しずつ解除されている東京電力福島第一原発の周辺では、復興作業がこれから本格化していく段階だ。

 これまで復興庁は、被災地に寄り添い、自治体や住民らの声をすくい上げる「御用聞き」の役割を重視してきた。そこから一歩前に出て、現場で課題を掘り起こし、解決につなげられるか。復興の司令塔としての力量が問われる。

 復興庁の特徴は、震災前は国の役割とはされてこなかった仕事に力を入れていることだ。仮設住宅に住む人の交流促進や、復興にかかわりたい民間人材を被災自治体や団体に紹介するといった事業だ。行政が不慣れな分野だけに、ノウハウを持つNPOや企業と積極的に連携してきた。

 一方で、被災地の実情を把握し、状況に合わせて政策を見直す力には疑問符がつく。

 たとえば、住宅地の再建が難航しているのに、そばに巨大な防潮堤ができた例がある。工場や商業施設の再生に補助金を出す制度では、「雇用人数や入居の条件が実情に合わず、使いにくい」といった不満が地元から漏れる。

 復興事業の大半は他の省庁が担当している。復興庁はそれを調整する役回りだが、職員の多くは各省庁からの出向者だ。縦割り意識や出身母体への遠慮がないだろうか。

 政府内で格上の役所と位置づけられ、他省庁への勧告権も持つが、使ったことはない。担当閣僚も毎年のように交代し、存在感がなかなか高まらない。

 復興の重点は今後、福島県の原発周辺地域に移っていく。これまで賠償や除染といった仕事をそれぞれの担当官庁が進めてきたが、地域の再生に向けた取り組みでは復興庁が先頭に立つべきだ。

 被災地では、高齢化や過疎化が震災で一気に加速したが、これらはもともと国内の多くの地方に共通する課題である。復興庁の経験は今後のまちづくりに大いに生かせるはずだ。

 NPOや企業といった民間と二人三脚で、「公」の仕事を担う。こうしたやり方をさらに広げ、新しい行政のモデルを目指してほしい。