【ワシントン=中村亮】安倍晋三首相とトランプ米大統領の初の首脳会談が10日昼(日本時間11日未明)、ワシントンのホワイトハウスで始まった。首相はアジア太平洋地域の安定に向けて日米同盟の強化を訴え、世界経済の成長に向けて日米の協力加速を提唱する。通商分野ではトランプ氏が自動車分野を主要テーマとして取り上げる可能性があり、日米の駆け引きが予想される。
首脳会談は予定より15分遅れて現地時間10日午後零時15分(日本時間11日午前2時15分)に始まった。米側はフリン大統領補佐官やバノン首席戦略官・上級顧問らが同席。会談は約45分間を予定している。共同記者会見を開いた後、昼食会でも議論を続ける。
会談に先立ち、両首脳は記者団の写真撮影に応じ、握手を交わした。トランプ氏は握っていた首相の手の甲を軽くたたき「この首脳会談をとても楽しみにしていた」と伝えた。
会談の最大の焦点は通商問題で、自動車が重要な議題になる見通しだ。日本側の事前説明によると、首相は日本企業による米国での投資や雇用が米経済に果たした貢献を説明し、経済関係をさらに飛躍させようと呼びかける。
首相は会談に先立ち全米商工会議所であいさつし「今回の訪米が日米の新たな経済関係の幕開けになることを期待している」と表明した。「米国で走るトヨタ車の7割以上、ホンダ車の9割以上が米国内で生産されている。日本企業全体で生み出した雇用は84万人になる」と指摘した。
首相は暗に中国を取り上げ「鉄鋼はある国の過剰生産が止まらず、世界的な安値を招いている。知的財産のルールが浸透しなければイノベーションの成果も台無しだ」と語った。その上で「世界の通商ルールを共通にし、公正なルールの下で競い合い、成長を遂げることができるはずだ」と、自由で公正な貿易ルールの必要性も唱えた。
日本側は麻生太郎副総理・財務相とペンス副大統領をトップにする経済協議を新設し、貿易や投資で自由度の高いルールを議論したい考えだ。米政府高官は通貨政策も議題にのぼる可能性があると話す。
日本側の事前説明によると、安全保障分野では、首相は日米同盟を基軸に、価値観を共有する国々との協力の重要性を訴える。沖縄県・尖閣諸島が米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象と確認する方向だ。会談後、経済や安保に関する共同文書を発表する見通し。
首脳会談前に、麻生氏はホワイトハウスでペンス氏と会談した。岸田文雄外相も国務省でティラーソン国務長官と会談し、環太平洋経済連携協定(TPP)について「経済的、戦略的意義がある」と説明した。ティラーソン氏は尖閣諸島への日米安保条約の適用を明言。両氏は東アジアの安保環境が厳しく、日米同盟が重要との認識で一致した。北朝鮮対応で日米韓の協力が重要とも確認した。
両首脳は昼食会後、大統領専用機でフロリダ州パームビーチに移動。大統領夫妻が主催する夕食会を終え、10日夜はトランプ氏の別荘に宿泊する。11日はゴルフを一緒にプレーし、再び夕食会に臨む。ほぼ丸2日間をともに過ごす予定だ。