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患者1人に1億円かかっていた!?…再生医療のコスト、初の調査
iPS細胞(人工多能性幹細胞)などを用いる再生医療の治療コストについて、京都大学iPS細胞研究所の八代嘉美・特定准教授を中心としたチームが初の実態調査を始めた。
治療に取り組む10程度の大学や企業に聞き取り、3年かけて報告書をまとめる。再生医療は多額の費用がかかる点が懸念されており、実態を明らかにし、今後の研究開発に役立てる。
再生医療は、細胞の培養や加工などで従来の治療より費用や手間がかかる。理化学研究所などが2014年に行ったiPS細胞による目の難病治療では、患者1人に約1億円かかった。
コストの詳細なデータはなく、将来、国の保険財政を圧迫しかねないとの指摘もあり、実態把握を求める声が高まっていた。
調査は今年1月に開始。対象となる大学や企業の担当者らに、治療に使う細胞の培養費や品質検査費、移植手術費など、どんな治療にどれだけの費用がかかるのかを細かく聞き取る。対象は、脊髄損傷の治療準備を進めている慶応大学、食道や歯肉の再生を手がける東京女子医科大学、がんなどの免疫細胞による治療に取り組む京都大学などが含まれている。
日本再生医療学会の会員計約5600人へのアンケートも行う。
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【再生医療】 事故や病気で失ったり、損傷したりした臓器や器官を修復し、機能を再生させる医療。iPS細胞から様々な組織や細胞を作って移植するなどの方法がある。日本の経済成長戦略の柱としても期待されており、国内の市場規模は2030年、1兆円が見込まれている。