トランプ米大統領が、見直しも示唆していた「一つの中国」政策について、一転して「尊重する」と表明した。くしくも日米首脳会談の直前に最大の対立の火種が取り除かれ、中国の存在感を見せつけた形だ。ただ中国や日本にとって、トランプ政権では「台湾」や「同盟」といった死活的な課題すら交渉材料になり得る危うさも浮き彫りとなった。
「電話での会話は長時間にわたり、とても真心のこもったものだった」。ホワイトハウスが米中首脳の電話会談を発表した資料では、トランプ氏と習氏の会談が成功だったことを強調してみせた。両国関係の重要性を確認し、近く正式に会うことでも合意した。
トランプ氏はこれまで、中国が輸出を有利にするため人民元を米ドルに対して安く操作しているとして、「米企業は他国と競争できていない」と批判。中国が軍事拠点化を進める南シナ海問題でも繰り返し非難してきた。
なかでも、両国関係の最大のトゲになっていたのが、中国と台湾がともに中国に属するという「一つの中国」政策だ。トランプ氏は、為替や貿易面で中国側の譲歩がなければ見直す可能性も示唆。これに中国も反発し、両国関係がきしんでいた。
ただ、中国側は最高指導部の顔ぶれが変わる第19回共産党大会を今秋に控え、対米関係の極端な悪化を避けたい昨年末から関係改善に動き出した。
中国外交を統括する楊潔篪(ヤンチエチー)国務委員(副首相級)が昨年12月中旬、メキシコ訪問のついでにニューヨークに立ち寄り、マイケル・フリン大統領補佐官(国家安全保障担当)と会談。今月3日にも電話で協議した。また崔天凱・駐米大使も水面下で、トランプ氏の娘婿で大統領上級顧問のクシュナー氏と接触を続け、関係改善の糸口を探った。
だが、米政府元幹部によると、…
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朝日新聞国際報道部