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びーきゅうらいふ!

 ホラー映画やアニメやゲームを好きに語る

【映画】キサラギ ネタバレ感想~アイドルの一周忌に集まったファン5人の会話劇!声優版はラストが違うぞ!

映画 映画-その他

キサラギ スタンダード・エディション [DVD]

キャスト ★★★★★
ストーリー ★★★★★
テンポ ★★★★

結論:舞台が好きな人におすすめ!

2007年 日本
監督:佐藤祐市
脚本:古沢良太

※あらすじ・本編ラストのネタバレあり。未視聴の方はご注意ください※

目次

ストーリー

2007年 2月4日。
自殺したアイドル『如月ミキ』の一周忌に集まった5人の男。
ファン同士の気軽なオフ会になるはずだった集まりは、いつしかミキの死の真相を暴く裁定の場となっていく・・・。

あらすじ兼登場人物紹介

如月ミキ(演:酒井香奈子)

「遅れてきた清純派アイドル」という触れ込みでデビューしたマイナーなグラビアアイドル。プロポーションもパッとせず、二重はプチ整形。壊滅的に音痴で演技もドヘタだったが、ヘアスプレーと殺虫剤を間違って使ってしまうほどの天然ドジっ子キャラで、ごくごく一部にカルト的な人気を誇る。2006年の2月4日。部屋に油をまき、火をつけて焼身自殺した。

泣かず飛ばずの人気からヘアヌード写真集の企画があったこと。自殺の直前、マネージャーの留守電に「やっぱり駄目みたい」と録音を残していたことから、仕事に悩んでの自殺かと思われたいたが・・・?

オダ・ユージ(演:ユースケ・サンタマリア)

喪服を着てやってきた男性。
非常に生真面目な性格で、お気楽ムードだった追悼会の空気を一変させた。ハンドルネームの由来はもちろん「事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだッ!!」の人。密かに憧れていたらしい。安男のアップルパイに食いつくなど意外に甘いものが好き。

その正体はミキの元・マネージャー。
今は細身だが以前は太っており、ファンからは「デブッチャー」と有名だったが、ミキの死により激ヤセしていたため誰も気付かなかった。

ミキが自殺の方法に周囲に被害が及ぶ焼死を選んだことを疑問に思い、彼女はストーカーに殺害されたのではと考えていた。彼の話によれば、ストーカーは事件の1週間前、1月26日にミキの家に侵入。布団を畳み洗い物を片付け、私物を盗んでいった。さらに事件当日も、寝室の窓から部屋に侵入していたという。

ファンサイトの掲示板にミキしか知らないような部屋の状況を書き込む人間がいたことから、犯人(ストーカー)を誘き出すため、メンバーを追悼会に呼ぶよう家元に提案していた。

いちご娘(演:香川照之)

不審者にしかみえないおっさん。
掲示板では女性のフリをして書き込みをしていた。

ミキがアロマキャンドルやラッキ・チャッピーグッズ集めにハマっていたことなど、関係者しか知らない事情を書き込んでいたこと。ストーカーが盗んだミキの私物のカチューシャをつけ現れたことから、ストーカー本人と断定され、オダに殺されかける。

だが部屋に侵入したのは事件の1週間前の一度きりであり、事件当日はミキが男に抱きつき、部屋に招き入れたところを目撃。そのショックでヤケ酒を飲み、無銭飲食の罪で安達刑務所の留置所で一晩を過ごしていた。

その正体はミキが4歳の時に生き別れた、ミキの実の父親。
娘だと気付いてからは電柱の影から部屋を見守っていたが、ミキが寝室の窓を開けっぱなしで仕事に行ってしまったため、閉めてあげるついでに部屋を片付けていった。

スネーク(演:小出恵介)

すぐに他人に乗っかる腰巾着精神が旺盛な男。ノリがべらぼうに軽い。いちご娘が本当に女の子だと一人だけ信じているなど根が単純。というか単細胞。雑貨屋勤務。

正体はミキの友人。
持っていた生写真から、いちご娘が事件当日に見た「ミキの部屋に入っていったモヒカン頭のチャラ男」であることがバレた。

ミキはスネークが勤める雑貨屋にラッピーチャッピーグッズを買いにくる常連客であり、タレントであることを知らずに接していた。当日は新入荷した「ラッキーチャッピーのボトル(6本入り)」を部屋まで配達し、調味料やハンドソープなどの入れ替えを手伝っていた。(ちなみにミキが抱きついていたのはこの箱の方である)

ファンというより個人的にミカに好意を持っておりその場で告ったが、恋人がいると即フラれたらしい。

が。事件があった時刻には、直前に起きた地震の影響で店長と一緒に商品棚の整理整頓に追われていたため、アリバイはある。

安男(演:塚地武雅)

何かと場から消え、間の悪いタイミングで現れることに定評があるメタボ。毎回部屋に戻るたびに状況が激変する可愛そうな人。自分の頬をはたいて自分を罰する癖がある。

農家を営んでおり、福島県から片道6時間弱かけてきた。お菓子作りが趣味でお手製のアップルパイを持参してきたが、それが後に悲劇を呼ぶことに・・・。

正体はミキの恋人。
ミキのことを「みきっぺ」と呼ぶ彼女の幼馴染で初恋の人であるやっくんその人。ハンドルネームは本名である。ミキ曰く後ろ斜め45度からみるとジョニーデップにちょっと似ているらしい。

事務所からも公認の恋人同士で、遠距離恋愛ながらも頻繁に電話で連絡をとりあっており、常日頃マネージャーが怖いと頻繁に愚痴られていたこと。ヘアヌード写真集の発売をマネージャーが勝手に決めてしまったとミキが泣いていたことから、死の原因はマネージャーにあるとオダを責めた。

事件直前にもミキと会話しており、その際、ゴキブリを退治しようとしたものの殺虫剤がなくて困っていた彼女に「ママレモン(台所用洗剤)」を使うことをアドバイスしていた。

その後マネージャーから電話があり「後でかけなおす」と言われたのだが、それがミキとの最後の会話となった。

家元(演:小栗旬)

追悼会の主催者。
幻のデビュー作からありとあらゆるグッズを網羅している重度の如月ミキマニアで、ファンサイトも運営しているしがない公務員。3年間毎週1通以上(通算すると一人で200通以上)のファンレターを送り、一度だけ、ミキちゃん直筆の返事をもらったこともある。(「辛い」という漢字の線が一本多かったり、送り仮名が間違っているなど誤字脱字だらけだったことから、事務所のチェックすら通していない個人的な返事であったことが伺える)

他殺を疑うオダ・ユージに対し物的証拠は一切ないと断言していたが、それもそのはずで彼の正体は警察。警視庁総務部情報資料管理課勤務で、父親は警視総監という超エリートである。

「ミキちゃんのことなら知らないことはない!」と豪語していたが、前述のメンバーたちが全員ミキちゃんの身内であり、自分ひとりだけ赤の他人であることに絶望していた。

如月ミキの死の真相

2月4日。
雑貨屋でお気に入りのグッズを購入するなど元気な姿を見せていた如月ミキ。死の直前の行動は・・・。

PM10:00~
やっくんこと安男との最後の電話で、ゴキブリをママレモン・・・ではなくファミリーピュアで退治しようとしていた。

PM10:35。
マネージャーと翌日のスケジュールの確認。安男には「後でかけなおす」と伝えていた。

PM10:55。
マネージャーの留守電に「やっぱり駄目みたい。私もう疲れた。色々ありがとう。じゃあね」 という遺言を残し、焼身自殺。

元気にゴキブリを追い掛け回していたミキが、その20分後には自殺。さらに、恋人ではなくマネージャーにだけ遺言を残すという不可解な状況に違和感を抱いた家元。

ミキが一切敬語を使っていないことから、この遺言は安男に向けた「ゴキブリを退治しようとしたけど、殺せなかった(ダメだった)」という趣旨の伝言で、リダイヤルしようとした際に間違って着信履歴からかけてしまい、マネージャーの留守電に入れてしまったのではないかと推測。

またスネークの証言により、ラッキーチャッピーのボトル(6本セット)に調味料や油、洗剤などを詰め替えていたことから、彼女がゴキブリを殺そうと部屋に撒いたファミリーピュアは、実は油だったのではないか?という疑いを持つ。

その夜に棚から陳列物が落ちるほどの地震があったことから、彼女が最近ハマっていたアロマキャンドルが落ち、油に引火したことが原因なのでは?と仮説を立てる。

ラストは?

如月ミキの死は、不運な事故死・・・。

そう結論付けた4人。
自分一人だけ何も関わっておらず蚊帳の外だと泣く家元を無視して、オダ・ユージだけは、ミキの死体が発見された場所がクローゼットの中であり、彼女が逃げずにそこで死んだことから、結局は死因は自殺であるとの見解を示す。

だが部屋に忍び込んだいちご娘の証言により、クローゼットには沢山の手紙が入ったダンボール箱があったことがわかる。さらにスネークが部屋にあがった際、ミキは「大事な人の誕生日に送る」とクッキーを焼いていたが、安男の誕生日は2月ではなかったことも・・・。

家元への返事には「(家元からのファンレターは)ミキの命より大事な、宝物」と書かれていた。そして家元の誕生日は2月7日・・・。

彼女は火事の中。
命がけでファンレターを取りに戻り、そのまま死んでしまった。

彼女はたった一人のファンのために命をかけた。
それが、彼らが導きだした結論。
今日と言う日に5人がそろったことで明かされた、小さな奇跡だった。
彼らは最後にミキを忍び、一緒にダンスを踊る。

そして、2008年の2月4日。
2周忌の追悼会に集まった5人。そこにはかつてミキのイベントで司会をしていた男の姿もあった。

彼は言う。
「如月ミキは殺された」のだと・・・

舞台のような演出と脚本

5人の中で一番堅物でシリアスな役を演じたユースケさんと小栗さんが探偵役となって流れを作り、にぎやかし役に小出さん、場を行ったり来たりして物語のアクセントとなる役に塚地さん、最初から最後まで変人なのかまともなのか解らない不気味なおっさん役に香川さんと、役者陣5人のバランスが見事な作品。全く移動しない『会話劇』でありながら、終始テンポが良く、ダレることなく最後の最後まで面白い!

登場人物たちは時に探偵、時に容疑者役となり、立場がくるくると入れ替わりながら、やがて一人ひとりの正体が明らかになって、最後はピタリと全ての伏線が回収されていく。この鮮やかさが堪らない。

・・・だが一番好きな場面は、それまでずっとボカされていた如月ミキの素顔が初めて明かされ、ミキが歌う「ラブレターはそのままで」に合わせ、狂ったようにヲタ芸を踊る野郎5人のダンスシーンかもしれない。全然ジャンプできてないユースケさん、そして意外にキレがある香川さんに大爆笑。

虚像の物語

アイドル(虚像)の象徴として野郎の言葉のみで語られる『如月ミキ』は終盤まで素顔が明かされず、彼女が本当はどんな『個人』だったのか・・・それは結局のところ明かされない。というか、知ることはできないのだろう。恋人から見た彼女、父親から見た彼女、仕事仲間から見た彼女、第三者から見た彼女・・・それぞれが一面にしか過ぎず、何となく見えてきたようなつもりになっても、結局は真実は解らない。終盤、5人が導き出した結論が、再び覆されてしまうように。

小説版・声優版で異なるラスト

『キサラギ』は小説版、及び小説版を元にした声優キャストによるドラマCDが存在する。

声優版では主人公の家元を小野大輔さん、オノ・ユージならぬオノ・ダイスケを杉田智和さん、スネークを宮野真守さん、安男を中村悠一さん、いちご娘は藤原啓治さんがキャスティングされている。そして如月ミキ役として「ラブレターはそのままで」を歌うのは、あの堀江由衣さんである。だが一番気になるキャストはタイトルコールを担当している若本規夫さんかもしれない・・・。

それぞれ映画版とは結末が異なり、さらに小説版と声優版でもラストが異なる。とくに声優版は、映画版の結末しか知らない人間には衝撃のラストとなっている。

最後に!

本当はミキちゃんの命日、2月4日にあげようと思っていたのに・・・痛恨の極みッ・・・!!

ユースケさんがオダ・ユージというだけで面白い作品。当時は脚本が誰かということを特に意識せずに見てましたが、のちにリーガル・ハイで古沢さんの作品に再びハマることになるという・・・。どちらの作品も、会話のリズムやテンポが非常に心地いいというのがあるのだと思います。

2月になると見たくなる。ある意味季節モノな作品です。

↓ユースケさん、お好きですか?