とある小説を書く者の物語。   作:suryu-

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とある小説を書く者の物語。

「ああ、そうだ。こうするまでにどんな生き方をしたのだろうか」

見下ろすは人波。眼下に広がる世界はきっと自分の事など見えていない。彼はその事をよく分かっていた。
後ろには立ち入り禁止の看板。そう、其処は大きな屋上だった。



彼は、元来優しい性格だ。例えどんな事があろうと怒る事は無い。だが、そんな彼は幼稚園児である時から既に歪んでいた。

「お母さん。今日も遊んだよ」

「何をしたの?」

これだけ聞けば普通の日常の会話。なんの変哲も無い言葉のキャッチボールだ。
だが、母親は気が気で無かった。この幼稚園児である時の彼は、家では普段あまり話さない。父親が仕事柄なのか家に帰っては直ぐに寝る。これだけならまだしも、父親は家では少年を叱る事が殆どなのだ。それ故に、彼は家では基本無言になった。
少年は、この日珍しく母親に会話を持ち掛ける。そう、上記の通り遊んだという話だ。だが、次の言葉に母親は驚愕を覚える。

「えっとね、鬼ごっこ。木の棒で突っつかれるのから逃げるんだ」

「……え?」

少年は無邪気に笑う。まだ幼い笑みで穢を知らないといった顔だ。だが、母親は憤りも感じれば我が子の身が不安になったのだ。
明らかに虐めである。そこになんの疑いの余地もない。だが、少年は笑っている。故に恐れた。少年の歪みが何によるものか、分からなかった。



少年は小学生になり、それこそ親友と呼べる友を持った。だが、彼に世界は優しくはならない。両親の離婚だ。少年は親友と離れ中々会えなくなり、そして何故両親が離婚したのだと少年は考え、その末妹のせいだと妹に当たった。
無理も無い。少年は小学生。それも初頭の一年生だ。妹の産まれた時期から両親の仲が悪くなったと考えた彼は、日に日に妹にキツく当たるようになる。
その頃からだろうか。彼は食事量が増え始めた。後に分かった事だが、一種の過食症だったのではという事が考えられた。
だが当時の彼はそんな事は知る由もなく、ひたすら食べ、妹に当たりストレスを発散。或いはひた隠しにしていた。

「うわ、また来たのかよ」

「なんで居るの? 来るなよ、バイ菌」

彼は、転校してからずっと虐めを受けていた。彼には思い出らしい思い出がない。小学生の記憶はほとんど忘れたのではないかという位に。
彼は次第に学校に行かなくなった。そして、当時発売された家庭用据え置きゲーム機からネットの海へと向かうようになる。


もう、逃げるしかなかった。


彼は一人だ。学校の虐めは終わらず先生一同対応はせず。再婚とまではまだいかなくとも当時母親と共に居た後の再婚相手である父親の二人の所へはあまり出向かない。
父親も彼も、自分が不器用故にお互い寄り添えないということは後に気付くことはない。
だからこそ彼は自分をどんどん一人だと。独りだと思い込む。唯一の支えは祖母のみ。少年の心はゆっくりと崩壊の音をたて始める。



ふと、彼はある日なんの気無しに二次創作の小説を読み始めた。それは彼が恐らく唯一気に入った色々な女性を手篭めにしながらも戦いに明け暮れた最強の男の話。
少年は初めて夢中になり小説を読み始めた。

『嗚呼、面白い』

少年の世界は広がり始める。彼は瞬く間に小説。そして、二次創作の世界へとどっぷりハマった。これ程の事は、きっと初めてだ。
しばらくして、少年は自分も憧れ小説を書き始める。虐めの中に生きつつも生き甲斐を見つける為に、彼は彼の世界を描き始めたのだ。


最初の作品は、それは本当に拙いものであった。所謂某掲示板やネットで使われる記号等は使ってはいないのだが、何分地の文の足りなさや語彙力の無さ。表現力も満たされてはいなかった。
だが、毎回固定で閲覧してもらえる視聴者等を力に彼は生き残っていた。


そんなある日の事。


彼は曾祖母曽祖父の下から支えとなっている祖母と帰ってきては数日後の話になる。
祖母の様子がおかしい事には気づいていた。疲れが溜まっているのか。そう、少年は考えていた。そう思っていたのだ。
そして彼は、その三日後に解を見てしまう。

「なんで……だよ……!」

「離れて!」

朝起きれば母から告げられた事。祖母は錯乱。或いは発狂していた。その後、救急車に乗せられた祖母は幾つか病院を転々として、最後には精神病院へと辿り着く。其処で告げられた言葉は、少年には残酷だった。

「統合失調症……らしいのよ」

「……お母さん。それって」

「ストレスが溜まってなった精神病よ」

その言葉は少年に深く突き刺さる。彼は、ずっと気になっていたのだ。祖母に負担を掛けていなかったかと。

「……おばあちゃんの事、見なきゃな」

彼は暫くして退院した祖母の様子を毎日見るようになる。そこには罪悪感と負担を掛けている自分の情けなさがあった。

「貴方のせいじゃないのよ。昔からの積み重ね」

母親は少年に言う。だが、少年はそれでも祖母の下へ居続けた。罪悪感は日に日に積もっていく。
そして、少年自身も追い詰められてゆく。中学校でもやはり虐めは消えず、少年は学校に行けなくなる。祖母の下へも行きづらくなった。
少年はその中で小説を書く時に完璧に見える主人公を多く書くようになった。なぜ 見える なのかと言えば、彼は分かっていた。そんな完璧な存在等有りはしないと。
それでも、憧れは有るからこそ完璧な存在に見えるように書く。その中で完璧ではない部分を抱えるようにしながら。
そして、彼は妙な感覚を覚えていた。まるで時が繰り返していたかのような記憶。そして何度も怯える自分。そして、何時しか少年は死ぬ事ばかりを考える様になった。
ある時は首を吊ろうとしたり、ある時は暴れ、ある時は包丁を持ち出した。
彼は日に日におかしくなっていく。精神はすり減り記憶には親曰く改竄が見られ。
ある日、少年は発狂と言っていいほど暴れた。もしかしたら親に殺意すら持ったのかもしれない。彼の中の記憶には親の良い思い出が消えていたのかもしれないくらいに。
その末、落ち着いた後に病院へと彼は親と出向く。その診断結果はこれだ。

「妄想性障害ですね」

「……えっ?」

いつの間にか少年も精神の病気を抱えていた。そしてそれは彼に深く刺さる。まだ中学二年生の時であった。

「……どうすれば良いんだよ」

少年は悩むもそれでも生き続ける。精神疾患を抱えやっかまれようとも。
だからこそ彼はどんどん悪い方向に思考が向くことに気付かなくなっていった。そして、他人の想いすらにも気づけなくなり、天然や鈍感などと言われる事にもなった。
それは、少年が殆どの感情を無くしたという事に、誰も気付く事はない。いや、本人ですら気付けないのだから、誰もが気付く筈が無かった。
それでも彼は小説を書き続ける。言葉を綴り続ける。それしか道がないと分かっているからこそ。現実では精神病をやっかまれているとしても。
小説は裏切らない。それは彼の思っている事。彼の考えた通りに世界は動き、彼の思う通りに人々の想いは実る。
だから彼は現実を信じなくなった。付き合ってくれる一部の。ほんの一握りの友人のみしか付き合いも無くなった。彼はどんどん世界を閉じていく。それが正解だと信じて。


裏で見えはじめたアンチを無視してまでも。


そして遂には少年も高校生となった。これで漸く虐めから解放される。そう信じた。 一年目は何事も無い。彼もずっとそう思っていた。だが、彼は更に荒んでいく。前よりも人との付き合いが減り、親との仲も次第に悪くなりはじめた。
そして何より小説を書けなくなってしまう。想像力が消えてしまったのだ。以前まで湧いてでる程の想像力が有ったにも関わらず、だ。
小説は裏切らない。彼はそれでも信じ続けた。
だが、彼には悪い事が続く。二年生となった途端に虐めが起こる。
殴る蹴るは当たり前。カツアゲのような事までされるような日常となった。
少年はもう、人を。他人を信じなくなった。有るのは小説だけ。そんな生き方をするようになる。


けれども。


世界は何時も優しくはならない。彼の小説に荒らしや批判をする存在が居た。荒らしは掲示板等で経験したから対処出来たものの、批判には対処出来なかった。
それは、きっちり小説を見ていないかのような批判。そして設定改変等を含めた物もある。
彼はその時初めて小説を書く事が嫌になった。設定までもを変えろという言葉が彼には不快感を覚える。しかも、細部まできっちりと見てないと分かるような言葉で。

「……なんでだよ」

彼は最早口癖となったその言葉を呟けば
空を見る。月は雲に隠れていた。


彼は学校に行く事を続けてはいた。だが、事態は好転せず単位もギリギリな状態で高校に通い続ける。やはり、虐めは消えない。彼の心に鎖を次々と打ち込んでいく。彼は、限界だった。


ある日、気になるスレッドがありその掲示板を覗いてみる。そこにあったのは自分の小説の名前や好きだった作者の作品……そして、感想で今まで見たような名前も含んだ大量のアンチだ。自分の望んだ結果にならなかったとでも言うような物もある。

「うそ……だろ?」

もう、彼は全てを信じる事が出来なくなった。親との関係も良くなく学校では虐め……そして、愛していた小説も。故に、飛び出す。

「ちょっと、どこいくの!?」

母親の静止も聞かずに少年は走る。ひたすらに走る。そして、辿りついたのは立入禁止の看板が置いてあるとある屋上……高さは、かなりのものだった。




「ああ、そうだ。こうするまでにどんな生き方をしたのだろうか」

彼は呟く……独白のように。今迄の事を思い出すかのように。

「もう、こんな世の中に未練はない」

これは信じる事の出来なくなった少年の物語。他人から見たら、どうでも良い。寧ろ気にされない事だ。だが、決して軽くは無い話。

「俺という存在は今から消える。きっとエタったとしかあいつらは思わない。病気の俺を、精神病をやっかむ人からしたらこれは最良の結果なんだ」

彼は見下ろす。屋上から遥か下の地を。

「……だから、さよならだ」

そして、彼は飛び降りた。その後、ネットの狭い範囲には一つの小説の話題が出回るが、直ぐに収まった。

―それは、少年の書いた小説がエタったということ。そして同時期に少年が残した遺書にある、『もう私みたいな人は生まれないでほしい。虐めに苦しみネット世界に逃げても、小説を書かずに本人を騙してまでアンチをするような事態や、それで病気になってしまうような事も』という言葉の噂が―





さて、ここまでお読みになられた方はまず閲覧ありがとうございます。

これは私の現在の状況や過去等も割と含まれている為に書いていて少し辛い時もありましたが、それでもこのような実態がある事を知って欲しい気持ちがありました。
皆様は軽い気持ちで虐めや小説のアンチに設定改変要請などをしておりませんか?
願わくばそのような事が無くなる事を……

最後に、出来れば皆様もその事を気になさってください。見かけたら止めて下さい。作者を励ましてあげてください。
私からの、お願いです。






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