ISに追われ世界に散る「ヤズディ教徒」の行方
アメリカの為に働いたのに…突然の入国禁止
中東の少数民族ヤズディの男性、シフォックは、アメリカ軍の通訳として働いていた。アメリカは、軍の通訳の経験があるヤズディの渡米を受け入れてきたが、トランプの大統領就任によって事態は暗転。写真は故郷シンガル山の村でヤズディの子どもと撮ったもの(提供:シフォック)
「弟ナワフの奥さんが、アメリカに入国できずに困っている」
1月28日、中東の少数民族ヤズディの友人、ハサン(37歳)から、facebookでこんなメッセージが届いた。ハサンと、その弟のシフォック(31歳)、ナワフ(29歳)は、ISによる攻撃で故郷を追われ、イラクからアメリカに渡っていた。そして今回、イラクに残してきたナワフの妻ライラを呼び寄せようとしたところ、入国を禁止されてしまったのだ。トランプ大統領がテロ対策として、シリア、イラク、イラン、イエメン、ソマリア、スーダン、リビアの7カ国から難民や移民の入国を禁止する大統領令を出した直後のことだった。
米軍通訳のヤズディを受け入れてきた米国。だが……
ハサンら3人は、10年ほど前にイラク国内でアメリカ軍の従軍通訳として活動した経験がある。当時のアメリカ軍は、イスラム過激派が通訳を装って自爆攻撃を行ったことなどもあり、イスラム教徒ではないヤズディであればテロ行為を行う心配が少ないとして、彼らを重宝していた。そこでハサンらに限らず、多くのヤズディの若者たちが英語を勉強し、米軍の通訳として働いていたという。
彼らは、家計を支えるために危険な地域での任務にも同行していた。米軍基地で撮影された、アメリカの国旗が刺しゅうされたユニホームを着て、アメリカ人兵士の友人たちと笑顔でポーズをきめるシフォックが写った写真を見せてもらったことを思い出した。
シフォック(一番右)が米軍の通訳として働いていたときの1枚(撮影:筆者)