【ロサンゼルス長野宏美】米西部カリフォルニア州サンフランシスコの連邦控訴裁判所は9日午後(日本時間10日午前)、中東・アフリカ7カ国からの入国を一時禁止する大統領令について、即時停止を命じた連邦地裁の仮処分を支持する判断を示した。判断は3人の判事の全員一致でトランプ政権側の完敗と言える。これを受け、入国禁止の差し止めが維持されることになる。この大統領令を巡り連邦控訴裁の判断が出るのは全米で初めて。トランプ政権にとっては打撃で、政権側は最高裁に上訴するとみられる。
控訴裁は判断理由として「差し止め命令が維持された場合に取り返しのつかない損害を生むということを、政権は示せなかった」と指摘した。
判断を受け、司法省の報道担当者は「判断を検証し選択肢について検討している」と声明を出した。
1月27日に出された大統領令に対し、西部ワシントン州と中西部ミネソタ州が「違憲」として無効を求めて提訴するとともに、効力の一時差し止めを申し立てた。これを受け、ワシントン州シアトルの連邦地裁が2月3日、全米を対象に大統領令の即時停止を命じる仮処分を決定。政権側が控訴裁に不服を申し立てた。
7日に電話で行われた控訴裁の口頭弁論では、被告のトランプ政権側は「大統領は安全保障を考慮し、外国人の入国を止める権利がある」として、「大統領令を地裁判事が覆すことはおかしい」と主張。原告のワシントン州などは「宗教的な差別だ」と訴え、住民の家族関係や州立大学の運営、税収などに害を与えたとして、取り消せば「大混乱になる」と差し止めの維持を求めた。
攻防の舞台は連邦最高裁に移る見通し。控訴裁の判断を覆すには最高裁判事(定員9人)の過半数がそれを支持する必要があるが、判事は現在1人空席で、保守派とリベラル派が4人ずつの構成となっているため、今回の控訴裁の判断が事実上の最終決定になる可能性がある。最高裁で審理が続いている間は控訴裁の判断が維持される。