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【社会】

少年法適用「18歳未満」諮問 「更生機会奪う」の声も

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 金田勝年法相は九日、少年法の適用年齢を二十歳未満から十八歳未満へ引き下げることについて法制審議会(法相の諮問機関)に諮問した。十八歳から投票できるようにした改正公選法に少年法見直しの検討が明記され、自民党も引き下げを提言していた。ただ法改正されれば、十八、十九歳は保護観察や少年院送致など更生のための施策が受けられなくなり、起訴猶予や罰金刑で済むケースが増えるとみられる。専門家から「教育の機会を奪う」と懸念する声が出ており、法制審で議論の焦点になりそうだ。

 受刑者らの処遇を充実させるための刑事法の在り方も諮問。刑務作業を義務付ける「懲役刑」と義務のない「禁錮刑」を一本化する新たな刑罰の創設も議論のテーマとなる。答申まで一年以上かけて議論される見通し。

 現行少年法では、二十歳未満で事件を起こした場合、全件が家庭裁判所に送致され、少年院送致などの是非が検討される。適用年齢を引き下げれば、成人と同様に扱われることになり、弁護士らは「立ち直りのための支援を受ける機会が減り、再犯が増える恐れがある」と指摘。一方、犯罪被害者などは「犯罪抑止につながる」と賛成している。

 二〇一六年六月に選挙権年齢を十八歳以上にする改正公選法が施行され、付則で民法や少年法について検討することが明記された。自民党の特命委員会は一五年九月、いずれも引き下げるよう提言していた。

 法務省は一五年十一月に少年法の勉強会を設置。福祉関係者や犯罪被害者らからヒアリングし、賛否両方の意見が出ていた。成人年齢を引き下げる民法改正案は今国会に提出されない見通し。

 犯罪白書によると、犯行時二十歳未満の刑法犯での検挙人数は約十八万四千人だった一九九八年以降、減少傾向にある。一五年は約四万八千人だった。

 懲役・禁錮の一本化は、家具作りなどの刑務作業が中心となっている受刑者の処遇を見直し、個人の特性にあった教育や就労支援を充実させるのが狙い。実現すれば、明治以降百年以上続く刑罰の概念が大きく変わる。

 法制審では、裁判官が有罪と認めた上で判決や刑の宣告を留保し、社会内で一定期間過ごさせて更生したかどうかを見極める「宣告猶予」制度の導入も議論される。

 <少年法> 罪を犯した20歳未満の少年に関する刑事処分や少年審判の手続きを定めた法律。米国の制度を参考に、1949年に施行された。処罰ではなく保護や立ち直りに主眼を置く。2001年の改正法施行で、刑罰の対象が「16歳以上」から「14歳以上」に引き下げられたのをきっかけに厳罰化の流れが進んだ。その後、少年院送致できる年齢の下限が14歳から「おおむね12歳」に引き下げられ、少年に言い渡す有期刑(懲役・禁錮)の上限が15年から20年に引き上げられた。

 

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