英下院、ブレグジット法案を可決 EU市民の在住権保護は否決
- 2017年02月9日
英下院は8日、政府提出のブレグジット(英国のEU離脱)手続き法案を、494対122の圧倒的多数で可決した。法案審議は貴族院に移る。これに先立ち野党・労働党が提出していた、すでに英国内に合法的に住むEU加盟国国民の在住権を保護する規定が含まれる修正案は否決された。
下院は、EUに離脱を通告する権限を政府に与える法案を今月1日に可決した後、委員会で詳細を審議。離脱交渉における英国側の諸条件を定めた法案を、あらためて可決した。
メイ内閣のデイビッド・デイビス・ブレグジット担当相は「歴史的な議決」と称え、「国民投票でどう投票したかを問わず、この国に課せられた重大な作業を成功させるため、全員が一致団結する時だ」と呼びかけた。
メイ首相は3月末までに、正式なブレグジット交渉を開始したい意向を固めている。
法案採決前には、複数の修正案が審議された。中でも、昨年6月末の国民投票の時点ですでに合法的に英国内に住んでいたEU市民の在住権を保護するため、離脱通告から2年で自動的に在住権が消滅しないようにするという、ハリエット・ハーマン労働党議員の修正案が注目されていたが、332対290で否決された。これには保守党議員3人が造反し、賛成票を入れた。
ブレグジットの是非だけでなく、ブレグジットの諸条件についても国民投票を行うべきだという自由民主党の提案は、340対33で否決された。
野党・労働党は、法案に賛成するよう議員の投票を拘束。ジェレミー・コービン党首は、一部議員の辛い立場は理解するが、党として「ブレグジットを阻止」することはできないので、離脱手続き開始に賛成するよう指示したと説明した。
ダイアン・アボット影の内相は、1日の採決は欠席したものの今回は賛成票を入れた。「保守党によるブレグジットを非常に問題視」しているし、英国はこの選択を「後悔することになるだろう」が、「自分は影の内閣の忠実な一員で、ジェレミー・コービンにも忠実だ」と話した。
これに対して、クライブ・ルイス影の商務相は、採決前に影の内閣から辞任。ルイス議員を含め52人の労働党議員が党議拘束に造反して、法案に反対した。造反議員は1日の議決よりも5人増えた。
ルイス議員は「自分が代表し、愛し、地元と呼ぶ街を究極的には痛めつけるはずのものについて、良心に逆らって賛成することはできない」と述べた。
保守党からは、1日の投票と同様、ケン・クラーク元財務相がただひとり法案に反対した。
採決中には、ブレグジットに反対するスコットランド国民党(SNP)の議員たちが、EU賛歌でもあるベートーベンの「歓喜の歌」を歌いはじめ、副議長に「議事堂内の歌合戦はよろしくない」とたしなめられていた。
法案可決後にコービン労働党党首は、「本当の闘いがこれから始まる。今後2年の間、労働党はあらゆる機会を使って、ブレグジットが雇用や生活水準や経済を確実に守るようにする」とツイートした。
これに対してSNP党首でスコットランド自治政府首相のニコラ・スタージョン氏は、「いったいどうやって? たったいま保守党に白紙委任したのに。何一つ譲歩を獲得できなかったのに、それでも法案に賛成した。みっともない」と批判的にツイートした。
貴族院は現在休会中だが、20日に再開して以降、法案の審議を引き継ぐ。政府筋はBBCのローラ・クンスバーグ政治編集長に対し、「貴族院廃止の声が国中から湧き上がるような事態に避けたいなら、貴族院は速やかに民主主義を守りこの法案を可決しなくてはならない」と話した。
自由民主党のティム・ファロン党首は、貴族院で引き続き法案の修正を求め、最終的なブレグジット合意内容についての国民投票を求めていくと表明した。
(英語記事 Brexit vote: Clive Lewis quits shadow cabinet as MPs back bill)