親が育てられない新生児を匿名で預かる「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)について、関西での設置を目指すNPO法人が9日、神戸市北区の助産院に開設する計画を発表した。時期は未定だが、実現すれば2007年に運用を始めた熊本市の慈恵病院に次ぎ、全国2例目となる。一方、神戸市は「助産院での設置は医師法に抵触する」という厚生労働省の見解を示し、医師が関わる態勢づくりが課題となる。
神戸市北区ひよどり台2の「マナ助産院」に、NPO法人「こうのとりのゆりかごin関西」(大阪府箕面市)が設置する。ゆりかごはスタッフルームの一角に新設し、約800万円の費用を見込む。
また、望まない妊娠をした妊婦らの電話相談に応じる窓口を、今年9月にも設けるという。
これに対し、法人から計画の説明を受けたという神戸市の担当課長は同日の会見で、医師のいない助産院にゆりかごを置くことが医師法に触れるとした厚労省の考えを説明。「預かった赤ちゃんの健康状態を判断するのは『医業』に当たる」と述べた。
その上で「赤ちゃんポストを否定しているわけではない。医師法の条件を満たせば相談に応じたい」とした。
同市の見解を踏まえ、法人は24時間診察に対応できる嘱託医を置くことで開設を目指す方針を示す。ゆりかごの開設や運営、相談事業に充てる基金を設立し、寄付を募る。
全国初のゆりかごが設けられた熊本市の慈恵病院では、同市が「条件」として、子どもの安全確保▽相談機能の強化▽公的相談機関などとの連携-の3点を提示した。神戸での開設も、これらが課題となりそうだ。
慈恵病院は15年度末までの約9年間に計125人の新生児を受け入れており、近畿からも10人が預けられた。
NPO法人は関西の医療関係者や母子支援に取り組む市民グループが昨年9月に設立。マナ助産院は1993年の開設以来2千人以上の出産を扱った。現在9人の助産師が24時間体制で出産に対応している。(広畑千春、森本尚樹、武藤邦生)