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『子どもと情報メディア』で最も言いたかったこと

著者 村田育也

 本書で主張している最も重要なことは,子どもに情報メディアを使わせるかどうかを議論する際に,
  • 情報メディアの依存性(長時間使用)と子どもの脳の発達の問題
を考慮するとともに,
  • 情報メディアの個人性と子どもの責任能力の発達の関係
  • 情報メディアの匿名性と子どもの社会性の発達の関係
という新しい2つの視点が必要だということです.これらは,私が今最も関心を持って研究しているテーマでもあります.
 個人性とは,私が提案している情報メディアの新しい尺度で,「情報メディアを個人(一人)で使用する度合い」を表すものです.詳しいことは,「第3章 3.4 ケータイの個人性と子どもの責任能力」に書いてあります(一部立ち読みは,こちらへ).情報メディアの匿名性と子どもの社会性については,「第4章 4.3 インターネットの匿名性と子どもの社会性」に書いてあります(一部立ち読みは,こちらへ).

 もう一つ,とても重要な主張をしています.第6章で述べた「ケータイやインターネットなどの情報メディアを適正に使えるようになるには,情報モラルと社会性と責任能力が必要である」という主張です(一部立ち読みは,こちらへ).子どもに成人と同じ情報モラルを要求することは非常に困難ですし,社会性は年齢とともに身に付けていくものです.そして,子どもに成人と同じ責任能力を求めることはできません.つまり,子どもには,インターネットなどの情報メディアを一人で使用するための必要条件(情報モラル,社会性,責任能力)が備わっていないと考えるべきなのです.
 その上で,「使わせない」「保護者が付いて使わせる」「条件付きで使わせる」「一人で使わせる」という情報メディアの使わせ方の4段階を提案しています.是非,順を追って最後まで読んでいただきたいと思います.

『子どもと情報メディア』で言っていないこと

 本書のように情報メディアを子どもに使わせるべきでないと主張する本は,ネット上で否定的な批判を受けるのが通例のようです.本書に対しても,痛烈な否定的批判がブログなどでなされています.しかし,本書に書いていないことを書いたように曲解し,それにケチを付けるのは本当に困ったことです.
 まず,「相関関係と因果関係を混同している」という批判がありますが,これは事実ではありません(⇒この詳細な説明はこちらにあります).そして,ネットいじめの事例として,被害者が自殺に至った事件を紹介していますが,子どもがケータイやインターネットを使うことで,「いじめが増える」とか「自殺が増える」とかは,全く書いていません.ケータイやインターネットを使うことで,いじめが質的に変化すること,見つけにくくなること,それらのために保護者や教育者の対処と指導がより難しくなることを説明してます.是非,先入観を持たずに冷静に読んでいただきたいと思います.

『子どもと情報メディア』で紹介した調査研究に新聞記事データベースを用いた理由

 未成年者の責任能力を議論するために,新聞社2社の記事データベースを用いて,出会い系サイト関連事件を調査した研究を紹介しました.出会い系サイト関連事件については,警察庁が毎年集計しているのに,なぜわざわざ新聞記事を使ったのかと疑問に思われた方がおられたようです.しかし,警察庁が公表しているのは,18歳未満の集計データと成人を含めた全体の集計データです.本書を読んでいただければわかりますが,この調査研究は,年齢による責任能力の発達曲線を描くために行いました.つまり,年齢毎に出会い系サイト関連事件に関わった未成年者数を集計する必要がありました.また,「新聞社が取材して記事にした」というフィルタが通っていても,それも未成年者の責任能力に対する社会的な判断を反映したものと考えることができます.したがって,新聞記事を使うことには正当な理由があり,研究上の問題はありません.
 本書は,一般の人に読んでいただけるように,専門的な記述を意図的に省略しています.研究手法に関する批判をされる場合は,私が学術誌上で発表した論文を読んだ上で,していただきたいと思います.また,反論を学術誌上で発表されることについては,大いに歓迎いたします.

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