オランウータンの鳴き声、言語進化の様子表す=研究

  • 2017年02月9日
Orangutan (c) Tim Laman Image copyright Tim Laman
Image caption オランウータンの鳴き声から、人間の祖先が言葉を獲得した過程が分かるかもしれない

オランウータンの鳴き声を長年にわたり調べてきた英ダラム大学の研究者が、人類の言語の発声の手がかりを得られるかもしれないと報告した。

アドリアノ・レイス・エ・ラメイラ博士は、オランウータンが唇をキスするようにとがらせて発する音を4000件以上録音し、分析した。その結果、オランウータンが発する子音の羅列のような鳴き声には、様々な意味があるようだと分かった。

英科学誌「ネイチャー・ヒューマンビヘイビヤー(人間行動)」に発表された論文で、博士は「人類の言語は非常に発達していて複雑だ。伝達しようと思う情報のほとんどすべてを音に置き換えることができる」と書く。

「そのため人類が言葉を使って複雑なメッセージを伝達するようになる前には、もっと基本的な形があり、そこから言葉が発生したのではないかと我々は考えがちだ」

「そこで我々はオランウータンの発声行動をタイムマシーンとして使い、人類の祖先がやがて子音や母音となるものの前段階の音を使っていた時の様子について、検討してみた」

研究チームは、オランウータンが発するキスのような音に注目した。多くの子音と同様、オランウータンの出す「t」、「p」、「k」に似た音は、声よりも唇や舌、顎の動きに依存しているからだ。

「キスの摩擦音に声帯の動きは関係ないので、聴覚に届く音としても、口から発せられる音としても、子音に近い」とレイス・エ・ラメイラ博士は説明する。

言語研究において、子音に特化したものはこれまで非常に少なかった。しかし子音研究の第一人者、リバプール・ジョン・ムーアズ大学のセルジュ・ウィック教授は、子音は言語の進化に欠かせない積み石のようなものだと話す。

「多くの場合、ヒトの言語では母音より子音の方がたくさんある。そして積み上げる石が多い方が、いろいろな音の組み合わせを作り出せる」

研究チームは、野生のオランウータン48頭から4486種類のキス摩擦音を収集した。数千時間に及ぶ鳴き声を聴くうちに、オランウータンたちは摩擦音に様々な情報を込めていることが分かった。

人間が同じ意味を伝えるために、いろいろな音の組み合わせを使う(たとえば「車」「自動車」「乗り物」というように)のと、似ているのではないかと研究チームは推察。「オランウータンは、自分の伝えたいことが相手に確かに伝わったか確認しているようだった。そのために、同じことを違う音の組み合わせで繰り返しているように聞こえた」という。

研究者たちは、複雑な言葉を作ろうと集中的に努力したというよりは、こうした「余分」、つまり意味は同じだが音は違う音の組み合わせによって伝達内容を強調したことが、初期の言語の進化につながったのではないかとみている。

レイス・エ・ラメイラ教授は、「伝言ゲームのように間違って伝わらないようにするため、必要なことだったのかもしれない」と付け加えた。

(英語記事 Orangutan squeaks reveal language evolution, says study

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