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1. 俺とさなえとゆっくりと(前編)
「なんだこれ・・・」
俺が夜、バイトを終えて家に帰ると、家が荒らされていた。
家・・・と言っても良くあるアパートの二階にある一室なのだが、部屋のあちこちに物が散乱して足の踏み場も無くなっていた。
「は〜あ・・・ついてねぇ・・・」
そう言いつつ、部屋を見渡す。こうなったのは初めてだが、噂に聞く通りならきっとあいつらがいる筈だ。
――いた。
俺は部屋の隅で、紙を集めて「ゆぴー・・・ゆぴー・・・」と寝息を立てて寝ている楕円形の影を捉えた。
そう、あいつ――ゆっくり――が俺の家に入って荒らした後だったのだ。
ゆっくり――数年前にとある場所で発見されて以来、爆発的に数を増やした生き物だとニュースで聞いた覚えがある。
その体もとい頭は大きいものでバスケットボール大にもなるらしい。その中身はなんと餡子やカスタードクリーム等と食べられるものなのらしい・・・見た事は無いが。そして一時期その可愛さ故にゆっくりブームが起こって全国に「ゆっくりを飼う」のが広まったらしいが性格がゲス化する事もあるらしく、ゲス化したゆっくりの面倒を見きれなくなった飼い主が山等に捨てた事で野良化・野生化して数が増えたんだそうだ。このゆっくりと言う生物は、生存能力は低い癖して繁殖能力だけは異様に高い様で捨てられたゲス化ゆっくりが即死んでもその子供が、その子供がと言う風にでもなって増えたのだろう。
そのゆっくりが俺の家を荒らして寝てる・・・うん、頭に来るねこの状況。
俺はゆっくりを虐待して回る鬼威惨とやらでは無いが、これは流石に誰でも無理だと思う。
「1、2、3・・・6匹か・・・」
多いのか少ないのかは良く知らないので分からないが、赤い髪飾りを着けたのが3匹、白黒の帽子を被ったのが2匹、それぞれ「れいむ種」「まりさ種」と呼ぶそうだ。
残りの1匹は・・・緑の髪飾り? うーん、何種かは知らないが同じゆっくりの仲間なのだろうな。
その6匹のゆっくりを観察してみると、れいむ種とまりさ種の中でそれぞれ1匹だけが大きかったのでこの2匹が番となった家族。つまりれいむ種とまりさ種の一家だろう。
にしても・・・俺がいるってのに良くこれだけ気持ち良さげに寝てられるよな・・・。
忘れてはいけないが、飽くまでここは俺の家。部屋を荒らした犯人を見過ごす程俺は甘くは無い。
と言う訳でちょっとデコピンでも食らわせてみる事にした。対象は・・・親っぽいれいむでも良いか。
丸めた指を近付けて・・・、
「ゆぴ〜・・・ゆぴ〜・・・(ピンッ)いだっ!」
おーおー、一発食らわせただけだが見事にひっくり返った。って言うかゆっくりって案外柔らかいんだな・・・。
「ちょっとぉぉぉ!? かわいいれいむになにやってるのぉぉぉ!?」
「うるさ・・・ここアパートなんだから静かにしなよ・・・」
こんなちっこいのから大声出るのか・・・って子供とかも起き始めたし。
「おきゃーさんどうしたのー?」「なにがおこったんだぜ?」「れーみゅのすいっみんをじゃましにゃいでー」
・・・一言言おう。五月蝿い。
子供も子供で一斉に喋り出すから五月蝿い事この上無い。
「まず、静かにしようか?」
「ゆっ・・・?」
お、静かになった。荒らされはしたものの案外こいつら聞き分け良いんじゃな・・・
『どぼじでにんげんがごごにいるのぉぉぉ!?』
え・・・? ん・・・? 今頃・・・? 気付いてなかった・・・?
「くそにんげん! どっからあらわれたのかしらないけどここはれいむのゆっくりぷれいすなんだよ! よそものはあまあまおいてさっさときえてね!」
は・・・?
「おきゃーさんはやっぱりさいっきょうだね!」「そうなのぜ! さっさときえるのぜ!」「はやくあまあまちょうだいね!」「まだなのぜ? はやくもってくるのぜ!」
・・・・・
「まりさは『ごっとふぁざー』さんなのぜ! だからまりさたちがかんっようなうちにおいてきえるのぜ!」
・・・・・・・
「いつまでいるの? れいむのびぼうにみとれるのもいいけどあまあまはいつもってくるの? ばかなの? しぬの?」
プチッ
「つかえないくそどれいだね! はやくあま(ズドッ)ぶべっ!」
あっ、ごめん蹴っちゃった☆彡
あ〜どうしよ、壁で弾けてシミ出来てる・・・仕事増えた・・・。
「お、おきゃーさん? どこいったの?」「かくれてないででてきてはやくあまあまをもらうのぜ!」
・・・さっき一瞬でも聞き分け良いなとか思った俺を殴りたい・・・。
「・・・あんたらのおかーさんとやらはとっくに死んだが」
「おいくそどれい! おきゃーさんをどこへやった!」
「嘘だと思うならその壁のシミでも見てれば?」
俺が指でシミを指すと、それを見たゆっくり達は漸く状況が飲み込めたらしく、顔だけしか無いゆっくりの顔が見る見るうちに青ざめて行く。因みにくそどれいにムカついたのはナイショ☆
「お、お、おにいさん! このおちびちゃんをあげるからゆっくりゆるしてね!」
「そろーり、そろーり、ばれないようにゆっくりにげるよ!」
・・・。こいつら本当にゲスで救いようの無い馬鹿だ・・・ゲス化とか野良化するとこうなるんだな・・・。時間掛けるのも馬鹿馬鹿しくなって来たし・・・。
俺はそう思うと、親まりさに差し出されて震えている緑の髪飾りのゆっくりを取り敢えずそこのテーブルに置いておいて・・・案外こいつボロボロだな、さっきの様子とかから見るに見た目が違うからとかで良い様にこき使われてたんだろうか・・・? まぁ今は他優先。片付けとかもしなきゃなんないからさっさとやんないとな。
俺は大声を出して逃げたいんだか逃げたくないんだかよく分かんないゆっくりの進路を塞ぎ、親まりさ共々捕まえる為手を伸ばす。
「ゆっ! はなしてね! ゆっくりおろしてね!」「おしょらをとんでるみたい〜」
ふーん、掴んでみても案外やっぱり柔らかい。饅頭か何かか? これ。意味不明な事喚いてるが。
取り敢えずどうにかする方法も思い付かなかったので、部屋の端にあったゴミ箱へと試しにシュートッしてみた。
「ふがっ!」
ナイッシュー☆ うん、これ綺麗に入ると案外気持ち良いな。れいむは悲鳴と共に潰れたらしいけど。・・・今思ったけどゴミ箱掃除するのも結局俺じゃん・・・やだなー。
まぁ良いや、
シュートッ「ゆびゃっ!」
シュートッ「ぽきゅっ!」
シュートッ「ぴきゃっ!」
シュー・・・あ・・・いなかった。
超☆エキサイティン!
ふぅ〜・・・これで赤いのと白黒のは消えたか・・・? 今はなん・・・
「うげ!? もうこんな時間!?」
あー、帰って来た時間も遅かったけどもうそんな時間なのか・・・。時間使い過ぎたし片付けは明日に回してさっさと寝よう・・・。
恐らくここから入ったのであろう半開きになったガラス戸を閉めて、俺は隣の寝室のベッドへと潜り込んだ。
「今日はどっと疲れたー・・・」
明日面倒だけど片付けしないとなー・・・。俺はそう呟きながら襲い来る睡魔と布団の暖かさに飲まれていった。
「zzZZ・・・」
「・・・・・・・・・」
家の主人が眠り程なくして、静かになった荒れた部屋の中で、小さな影が動いた。
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