前半はこちら
http://anond.hatelabo.jp/20170207184036
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=11369
著作権法38条1項によれば、①非営利で、②料金を徴収せず、③演奏者に報酬が支払われない場合、という3つの要件をすべて満たせば、JASRACに無断で公に演奏しても構わないとされている。
それではチャリティーコンサートはこれを満たすのか、が争われた事例。
「観客から直接入場料名目の金員を徴収することはなかったものの,寄付金を集めており,これは,著作物の提供について受ける対価と認められる」「被告らは,演奏会の売上げからこれまで2000台を超える車椅子を全国各地の社会福祉協議会に寄付してきた旨の主張をするが,そのような事実があるとしても,著作権侵害行為が正当化されるものではないことは明らかである。」
寄付金は「著作物の提供について受ける対価」だから、②の料金の徴収に当たるのだ、という判例。「寄付金(寄付とは言っていない)」ということか。チャリティーにかかわってる人は怒っていい。
最高裁判所昭和63年3月15日判決(「最高裁判所民事判例集」42巻3号199頁に掲載)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52186
「ホステス等が歌唱する場合はもちろん、客が歌唱する場合を含めて、演奏(歌唱)という形態による当該音楽著作物の利用主体は上告人らであり、かつ、その演奏は営利を目的として公にされたものであるというべきである。」
「上告人ら」というのはカラオケスナックの経営者(店長)を指している。
「お客さんが歌っている」という扱いだと利用料を徴収できない。そこで無理やり、「店長が歌っている」という扱いにすると宣言した最高裁判例。
さすがにこれには最高裁の裁判官の中からも「いささか不自然であり、無理な解釈ではないかと考える」 と述べる反対意見が出されたが、JASRACを勝たせたいがために、多数決で押し切った模様。
「カラオケ法理」と呼ばれるこの悪名高い迷理論について学者からの批判は根強いが、判例として固まってしまったために、後の裁判所はこれをどんどん活用して、もはやカラオケでもなんでもない事案も含めていろんな場面に広く適用している。海外で日本のテレビが見られるサービスも(最高裁平成23年1月20日判決)、自炊代行も(知財高裁平成26年10月22日判決)、日本にサーバを置く動画共有サイトも(知財高裁平成22年9月8日判決)、音楽CDを簡単に携帯電話に取り込めるサービスも(東京地裁平成19年5月25日判決)、みんなそれで潰された。
大阪地方裁判所平成6年3月17日判決(「判例時報」1516号116頁に掲載)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=13880
「カラオケ法理」によって店長には演奏の利用料を支払う義務があるとされたが、JASRACはそれだけでは飽き足らず、上映の利用料も支払えと訴えた。
法律上は「演奏」と「上映」とは別個の行為であって、それぞれに利用料を支払う必要があるということのようだ。
裁判所はこの主張を認めた。
「本件装置により右レーザーディスクを再生するとき、モニターテレビ画面には収録された連続した映像と音楽著作物の歌詞の文字表示が映し出され、スピーカーからは収録された管理著作物の伴奏音楽が流れ出るのであるから、これが映画の著作物の上映に該当することは明らかである。」
カラオケに行くと、曲とは無関係の古臭い映像がよく流れるが、裁判所はあれを眺めるのは映画鑑賞にあたると考えたらしい。
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=11389
「Dの名称で興行事業を行ってきていた被控訴人Oが,Kの懇請を受けて,同社に名義を貸したことにより,同社が控訴対象演奏会を開催することが可能ないし容易になったものであるから…,両者は,協力して,同演奏会を開催したものと解するべきであり,その結果,故意又は過失により,著作物使用料相当額の損害をJASRACに与えたのであれば,両者のそれぞれにそれを賠償する責任が生じるのは当然というべきである」
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail7?id=86203
「1審被告Y2は,自らを本件店舗の経営者と認識しているものではないものの,①本件店舗の開店・運営のための資金を提供し,本件店舗の賃貸借契約の連帯保証人となり,本件店舗に自らを契約者とする固定電話を設置し,自らのバンド名を本件店舗の名称として使用することを決定し,ミュージシャン仲間らとともに,本件店舗に無償で,ライブに不可欠な音響設備等を提供するなど,本件店舗の開店に積極的に関与したこと…からすれば,1審被告Y2においても,1審被告Y1とともに,本件店舗の共同経営者としてその経営に深く関わっていることが認められる。」
店長だけでは飽き足らず、その周辺にいる色々な人まで訴え始めたJASRAC。音楽を扱う人に好意で名義を貸すといつJASRACからいちゃもんをつけられるか分からないという恐ろしい社会になりつつある。
最高裁判所平成13年3月2日判決(「最高裁判所民事判例集」55巻2号185頁に掲載)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52293
「カラオケ装置のリース業者は…リース契約の相手方に対し,当該音楽著作物の著作権者との間で著作物使用許諾契約を締結すべきことを告知するだけでなく,上記相手方が当該著作権者との間で著作物使用許諾契約を締結し又は申込みをしたことを確認した上でカラオケ装置を引き渡すべき条理上の注意義務を負うものと解するのが相当である。」
第2位の演奏場所の名義からさらに飛躍して、カラオケ装置リース会社にまで責任を認めた最高裁判例。
「条理上の注意義務」などというわけのわからない概念に基づいて賠償金の支払い義務を課せられるのだから、もうやりたい放題である。
ちなみにこの「条理」という概念の由来は、今から100年以上前の明治8年に制定された「裁判事務心得」という布告である。
明治維新直後で法律の整備が全然追い付いていない状況で、それでも裁判をしなければならないということで、「民事の裁判に成文の法律なきものは習慣に依り、習慣なきものは条理を推考して裁判すべし」と定められた。
その後、法律の整備が進み、さらには日本国憲法76条3項で裁判官は「この憲法及び法律にのみ拘束される」と謳われている現在において、明治8年のこの布告が効力を持っているとは考えにくいが、最高裁はこの「条理」という概念を持ち出すことで、法律に何の規定もないにもかかわらず、リース業者に多大な義務を負わせたというわけである。
最近何かと話題のJASRACですが、ここで、JASRACを勝たせるために裁判所がむちゃくちゃな理由を述べている判例ベスト10を見てみましょう。 第10位 「ダンススクールに通ってる受講生は『...
知財法は全く勉強したことが無いので勉強したら読み返そう。
http://anond.hatelabo.jp/20170207184036 http://anond.hatelabo.jp/20170207184136 チャリティーコンサートから徴収するJASRACも、それを認める裁判所もひどすぎると思わない??
最後に著作権がクソだって言ってるじゃん。 裁判所もJASRACも仕事をしてるだけだよ。