日米関係がアジア太平洋地域の安定と国際秩序の維持に貢献していけるよう、その土台づくりとなるような首脳会談にすべきだ。
安倍晋三首相がトランプ大統領との会談に向け、きょう米国に出発する。ワシントンでの会談の後、フロリダ州のトランプ氏の別荘を訪れ、ともにゴルフをする予定だ。
会談は、経済と安全保障が2大テーマとなりそうだ。
経済は、どんな話し合いになるか見通しは不透明だ。トランプ氏は、日本の自動車市場が閉鎖的と批判するなど的外れな発言を続けている。
首相は会談で経済協力のパッケージ案を提示するとみられる。トランプ氏が重視するインフラ投資や雇用拡大に日本が貢献する姿勢を示し、対日貿易赤字をめぐる批判をかわす思惑があるのだろう。
しかし、日本に非がないのに米国に一方的にすり寄っていく印象を与えてしまっては、トランプ氏に不当な対日要求を持ち出す余地を与えかねない。
首相は安易に相手の土俵に乗るべきではない。トランプ氏の保護主義は米国の利益にもならないことをしっかり説明し、自由貿易体制の重要性を理解してもらうべきだ。
安全保障分野では、先日、来日したマティス米国防長官が、尖閣諸島は米国の対日防衛義務を定めた日米安保条約5条の適用範囲と明言するなど、不安の払拭(ふっしょく)に努めた。
だが、トランプ政権では大統領と閣僚との意見の食い違いも起きており、首脳会談では、トランプ氏自身から日米安保体制についての認識を確認する必要がある。
中国や北朝鮮などアジア太平洋地域はもちろんのこと、ロシア、中東、欧州などの情勢についても十分に意見を交わしてもらいたい。
今回の会談は、日米2国間だけの問題ではない。
会談に世界が注目するのは、トランプ流の自国第一主義に日本がいや応なく組み込まれていくのか、日本が国際協調へのつなぎ役を果たすのかが問われているからだ。
初めは首脳間の個人的な信頼関係を築くことから始めるしかないだろう。互いに言うべき事を言い、反論すべきは反論する、そんな関係につなげたい。首脳間の関係を通じて、米国を国際秩序づくりに積極的に関与させ続けるよう、各国と協調しながら対応することが肝心だ。
日米関係の強化は重要だが、トランプ政権は従来の米政権とは違う。
自国の利益を第一に掲げ、そのために理不尽な主張をする米国に同調していては、日本に対する国際社会の信頼が損なわれる。首相にその自覚を求めたい。