浜田知宏
2017年2月8日15時43分
■淀屋橋のカキ船
夜の帳(とばり)につつまれるころ、水面にビルのあかりが浮かんできた。ここは、水都・大阪の淀屋橋。ビジネス街を東西に横切る土佐堀川に、1艘(そう)の船が浮かんでいる。創業97年のカキ船「かき広」だ。
看板メニューはカキ鍋。兵庫産や岡山産などのカキが、みそとショウガで味付けされた鍋の中に並ぶ。鍋からすくいとったプリプリのカキを溶き卵につけてほおばった。思わず、「うまい」と叫んでしまった。
かき広は、広島出身の初代が1920(大正9)年に開いた。今の淀屋橋が完成するより、15年も前の話だ。店の玄関は川底から延びた鉄骨の上に載り、カウンター席を通り抜けると、船の上に4部屋の座敷が並ぶ。店主の吉見三千夫さん(65)によると、開業当初は船の利点をいかして別の川にも移動したらしいが、淀屋橋の完成とともに、現在の橋の南詰めに落ち着いたそうだ。
カキ船の歴史は興味深い。ルー…
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