「推しが武道館いってくれたら死ぬ」は平尾アウリによる漫画作品。
月刊COMICリュウで2015年より連載。
地方の地下アイドルの熱心なファンの姿を描く。
あらすじ
岡山県で活動するマイナー地下アイドル【ChamJam】の、内気で人見知りな人気最下位メンバー【舞菜】に人生すべてを捧げて応援する熱狂的ファンがいる。
収入は推しに貢ぐので、自分は高校時代の赤ジャージ。
愛しすぎてライブ中に鼻血ブーする……伝説の女【えりぴよ】さん!
舞菜が武道館のステージに立つ日まで…えりぴよの全身全霊傾けたドルヲタ活動は続くっ♥♥♥
予告動画
推しが武道館いってくれたら死ぬ 著:平尾アウリ - YouTube
伝説の女オタ
一目惚れだった。
花見の時期の公園で、たまたまチラシをもらった少女はその会場を訪れる。
ガラガラの客席で、数人のファンを相手に歌っていたアイドルグループのメンバー、市井舞菜。
シャイであまり前面にでない舞菜はグループ内でも人気は最下位であったが、その笑顔に少女は心を奪われる。
二年後、彼女は古参にして唯一の舞菜オタ、えりぴよとして周囲に知られる存在になっていた。
収入は全て舞菜のために注ぎ込み、自分の着るものは高校時代のジャージを残すだけになっている。
イベントの最前列を確保し、握手会にも毎回駆けつける。
彼女の生活の全ては舞菜のためにあると言っても過言ではない。
ところが、貴重な接触機会である握手会での舞菜は、えりぴよに塩対応なのだ。
二年間愛情を注ぎ続けてきた彼女に笑顔が向けられることはない。
実のところ嫌われているわけではなく、シャイである舞菜がえりぴよを意識するあまり、上手く対応できていないせいなのだが。
舞菜としては会いに来てくれるのはうれしいが負担をかけさせたくないと考えているし、えりぴよは舞菜の笑顔を見たくて頑張っている。
なのに肝心なことを言葉で伝えられない。
お互い気になっているのにすれ違う、一線を越えない百合関係のようになっている。
応援したくなる
えりぴよの愛は重い。
他のオタ仲間も指摘するように女性だからまだ許されている部分もあるだろう。
それは絵面的にもそう。
オタ仲間のくまささんはオタクっぽい容貌のオタクだが、えりぴよと並ぶことによって大人な常識人に見えてくる。
彼はリーダーのれお推しで、人気のなかった時期からセンターを務めるようになるのを見てきている。
長く応援することで推しの成長を見守れるというのはオタクの醍醐味なんだろうね。
そしてこれは未来の舞菜とえりぴよの姿かもしれない。
ファン側とメンバー側の、それぞれの好きを追求しつつ同じ方向に向かっていけるというのは幸せなかたちなんだろうな。
もうちょっとドロドロな部分があるかと思っていたけれど、2巻までの時点では嫌なキャラが出てこない。
でもだからこそ主人公たちの応援したいという気持ちが伝わってくるのかな。
猛暑日に10時間並んで手に入れた、一緒に写真を撮れる権利のチェキ券。
こんな表情をされるとね。
タイトルは、えりぴよのセリフにもある言葉から。
「舞菜が武道館いってくれたら死んでもいい」
1巻の中では3話が特におすすめ。
2巻からはメンバー間の関係も描かれていく。