日清紡ホールディングス(HD)は8日、メキシコを最有力の候補地として検討してきた自動車用のブレーキ摩擦材の新工場の建設を見送る方針を明らかにした。同日の決算発表記者会見の席上、奥川隆祥取締役常務執行役員が「メキシコについては白紙とした。メキシコ以外の場所にしなければいけないと考えている」と話した。今後は生産拠点がある米国やブラジルでの能力増強を検討する。
日清紡HDは自動車の主力部品であるブレーキ摩擦材の世界最大手。メキシコに世界の自動車大手の完成車工場が集積するのに伴い、社内で新工場建設を検討していた。
日清紡HDは2017年中にはメキシコを最有力に土地を手配する計画だった。具体的な投資決定はしていないが、顧客の動向を踏まえた候補地の選定で詰めの作業に入っていたところだった。トランプ米大統領の貿易政策への姿勢を受け、メキシコでの投資に不透明感が強まったため、メキシコでの用地選定を見送る。
日清紡HDはブレーキ摩擦材で世界シェア15%程度で首位とみられる。北米では米国ジョージア州で1工場を稼働させている。米国では今後、摩擦材に使われてきた銅を対象とする環境規制が強化されるため、日清紡が開発・生産した銅をほぼ使わないブレーキ摩擦材の需要の拡大を想定していた。