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ちしきよく。

雑多系ブログ。みなさんの「何かを知りたい!」という欲を叶えましょう。

大学生の仕送り13万が「甘えだ」という件について

時事ネタ・社会問題


あとで読む

先日、twitterをしていたらこんな画像に出会った。

f:id:zetakun:20170208091714p:plain

有名かもしれないが一応貼っておこう。

商学部商学科1年のサマキくんだ。(検索で出てこないように偽名)

この画像、今炎上している。

 

1か月の収入のうち、アルバイトが4万円。これはいい。

仕送りが13万。

 

そして、それを

誰にも甘えられない環境

と形容してしまう日本語力。

 

この二つにより、見事に炎上してしまった。

 

皆さんはどうお考えだろうか。

これを「いやいやそれは甘えでしょう」と言い切るのか、人の自由にしたらいいじゃんと考えるのか。

結構盛り上がっているようなので、今回は、両方の立場からのアプローチをかけて、結論を出すことにする。

 

大学生生活費の全国平均

賛成派・反対派ともに少し残念なのが、他の大学生が平均的にどうであるか、というデータを提示していないことだ。公平を期すため、ここは統計のチカラにお出まし願うことにする。

以下のデータは

www.univcoop.or.jp

より引用している。調べた中では最も信頼性が高そうなデータだからだ。およそ一万人の大学生に聞いた結果なので、十分信頼に値すると思う。

ただ、どこに住んでいるかによって生活費が大きく変わるのをお忘れなきよう。首都圏ならば通学・通勤代、家賃などで、近郊や田舎の大学生よりも多くのお金を払うことになる。

 

今回のデータでは、

f:id:zetakun:20170207221517p:plain

とある。つまり、国公立大学生と私立大学生の比は62.6:37.4である。これを考慮して、データをご覧いただきたい。

 

 

f:id:zetakun:20170207221234p:plain

2015年学生の生活費はこんな感じ。

仕送り   71,440

奨学金   23,270

アルバイト 25,320

定職         230

その他     2,320

収入合計     122,580

 

食費    24,760

住居費   53,100

交通費     3,320

教養娯楽費   9,240

書籍費     1,720

勉学費     1,490

日常費     5,540

電話代     4,100

その他     2,430

貯金繰越  12,500

支出合計   118,200 

 それに対して、サマキくんの収入内訳はアルバイト4万、仕送り13万。

支出は家賃7万5千円、食費1万円、光熱費1万円、電話代1万円、交際費3万円、その他1万5千円で、合計17万。

個人的に、サマキくんが貯金をしていないのすごいなぁと思ったが、口座は持っていないのだろうか?勝手な推測になるのでこれ以上は言わないが。

 

平均的な大学生と違い、サマキくんは奨学金を利用せず、仕送りとバイトのお金で賄っているようである。統計の平均そのままの生活をする大学生がいたとすれば、その人との仕送り額の差は58,550円。

 

これは平均からしてもかなり高いほうであることは認めざるを得ない。残念ながらこのデータには標準偏差がないため、彼がどのくらい一般的な大学生と離れているのか計算できないが。

だが、忘れてはいけない背景がある。彼の場合、家賃が75,000円だという点だ。

彼がもし田舎の大学の商学部に通っているとすれば、家賃75,000円はかなり高いほうだと言える。だが、彼はMARCHのM大学に通っている学生だ。

www.homes.co.jp

賃貸アパート・マンションなのだが、驚きのあまり私は腰が抜けてしまった。

8万円レベルが最低、高いところだと13万のところもある。

ひょえー、東京ってこんなに高いんだ。

 

都会のたいていの学生は家賃を安くするため、大学のすぐ周辺(徒歩5分とか)には住まない。私の友人は千葉から東京の大学に通っているため、家賃は大丈夫なものの交通費と時間がすごく無駄になってしまう、みたいなことを言っていた。n=1であるが、こういう学生も決して少なくはないのではないか。

 

 

かと思えば、安い物件もありはする。

http://gakusei.chintai.net/search/275/460/ensen/922/?from=20&to=30

http://gakusei.chintai.net/search/275/460/ensen/8602/?from=20&to=30

 

だが、上の中での安い物件はアパートばかりで、「学生マンション」というようなつくりのものはほとんどなかった。逆に高いところは温水便座やらインターネット環境やらいわゆる便利なものが揃っている。

また、一軒一軒確認する時間はないが、家賃が高いところのほうが買い物しやすい、駅が近いなどあって利便性が高いのだろう。

 

さて、彼のケースに戻ろう。彼の家賃は7万5千円。どこのキャンパスかはわからないが、東京で7万5千円であれば「大学周辺かつ利便性まずまず」のところに住んでいると思われる。節約しようと思えば安い物件もありはするが、何らかの事情でこっちを選んだ、ということだ。どういう事情なのかはわからない。

 

resemom.jp

のデータによると、(n=984)

賃貸サイト「キャリルーノ」、購入サイト「オウチーノ」を運営するオウチーノ総研は11月30日、東京の大学に通う大学生984人を対象にひとり暮らしに関する実態調査を実施。第1弾として「イマドキの大学生のひとり暮らし事情/部屋探し編」を公開した。

現在ひとり暮らしをしている大学生の85.2%が大学入学時に引越しをしている。そのうち96.3%が引越し費用を全額親に負担してもらったと回答。また、91.7%が家賃を全額親に負担してもらっている。

 大学生の部屋の家賃で一番多いのは6万円台で30.8%、次に5万円台と7万円台が26.9%。家賃平均は6.3万円だった。

 こちらはより(東京限定という意味では)正確なデータになる。

f:id:zetakun:20170207225536p:plain

東京の大学に通う学生のおよそ4分の1は家賃7万円台のところに生活している。

このデータを見れば、「家賃7万5千円」は確かに世間一般の大学生から見ればかなり高いが、炎上するほど高いというわけでもないように思える。

 

だから、家賃の分を払ってもらうとすれば、生徒がアルバイトで賄わないのだと仮定すると、親が仕送りによってその分を払わねばならない。

というか、統計に登場するような大学生のうち、結構な割合の人が親に家賃を払ってもらっている。それを示すのが下のデータだ。

f:id:zetakun:20170207230642p:plain

一般的大学生とサマキくんの家の家賃の差額が21,900円であるから、親の仕送りは21,900円余計にかかる。

 

さらに、一般大学生がもらっている奨学金を、彼は利用していない。これも親が負担するとすれば(あくまで、すればの話だが)、仕送りは23,270円余計にかかる。

 

その二つを考慮してみると、サマキくんの親は一般大学生よりも多くの額を仕送りとして支払う必要がある。

一般大学生との仕送り額の差は58,550円だから、そこからこの二つを引いて、残りは13,380円。

こう聞くと、そんなに叩くことでもない……ような気がするのは、私だけだろうか。

「これは甘えだ」派の人たち

だが、問題は家賃や仕送り額の多さのことではない。上の統計で見たように、そっちで叩くのは少し筋が通らない気もする。

 

彼を批判する人たちのほとんどは、その家賃の高さではなく、「仕送りをそんなにしてもらっているのに、『甘えてない』なんてよく言えるな」という理由からである。たぶん。私もはじめそう思ったから。

 

大学生である私でも、確かに「自分でなんでもやってます」みたいな書き方なのは、最初見たときうーん?となってしまった。あの書き方だと批判が来るのはある意味当然だ。

世の中には、「奨学金を最大限利用し、アルバイトに日々勤しみ、自分で学費を払い、自分で家賃を払い、自分で食事代光熱費携帯代を払う」というツワモノ大学生もいて、そういう人生の人たちから反感を買うのは当然の話。彼らにしてみればこの生活は甘えだ。それは確かに否めない。

え、私?ブログ書く暇がある時点でお察しですよ。お願いします。

 

「甘えじゃない」派の人

彼は甘えじゃない。都会に住む大学生なら普通だこんなの、という考えの人たちが主にこっちに属する。

仕送り13万は都会ではそんなに劇高(造語)でもないぞ?

とか、

家賃が7万5千円なのを考えれば、仕送りはこれぐらいでもいいと思う

とかとか、

自分で月4万円は稼いでるからいいじゃん

とかとかとか、

私立だからまあ、親は余裕があってもおかしくはないぜ

 

という意見が散見された。

 

炎上した理由

残念なのは、「甘えじゃない」派で、あまり彼を擁護できていない人が結構多いことだ。(擁護する気があるかどうかはわからないが)

 

確かに家賃や仕送りの多さの話はある。だが、どうしてこれがここまで炎上しているのか、というより深い理由を考察すると「家賃が高かったから」「仕送りが多すぎるから」というだけの単純な理由ではないことがわかるだろう。

要するに、そこだけを擁護するのは、「甘えだろう」派への反論にはなっていないと思う。

だから私は最初にデータを示したうえで、こうやって論を展開している。

 

炎上の理由だが、さっきも言ったが、下の文章

誰にも甘えられない環境に身を置きたかった

という文章に腹が立ってしまったからに違いない、「月13万は甘えやろww」という意見の多さから考えれば。

 

私はこの炎上が、

言葉のあやが引き起こす不幸な結果

によるものだと確信している。あ、言葉のあやは誤用というか、本来の正しい意味では使っていないのでご注意を。

あそこでサマキくんは「甘えられない」というようなことを書いていたが、どんなことを誰に甘えられないのか考慮してみる必要があるだろう。

 

「誰にも甘えられない環境に身を置くことで人間的に一歩成長できると考え、マンション暮らしを選びました」

という。つまり、一人暮らしをしたのは、自分を成長させるためである。

彼はその後、

「行動の選択肢が増えて視野が大きく広がりました」

「責任感が強くなり、精神的に一歩大人になった」

と述べている。

 

一般に、一人暮らしでは、行動や金銭の裁量が自分にある。そういう意味で彼は「行動の選択肢が増えた」と述べているように思われる。

そして、行動の自由度が増すということには、同時にコインの裏である責任もつきまとう。だから「責任感が強くなった」と言う。

 

この状態を「甘えられない環境」と形容しているのだ。たぶん「自分で決めなければならない環境」とでも言えば炎上しなかっただろうに。不幸だ。

 

現に、この文章に「自分一人で生活してるから甘えてない」なんてどこにも書かれていない。仮にそう書いていたら「いやいやお前、親に払ってもらっとるやんか」と突っ込みいれても当然なのだが。

あくまで彼は

親に甘えられない環境に身を置いている

というだけであり、

親に何もかも甘えない生活を送っている

とは言っていない。

 

言葉遊びだという意見もあるかもしれないが、それなら「甘えない環境」を「甘えない生活」と早とちりして人を叩くのも言葉遊びだろう。

批判するのだから、契約書を読むときのように注意深くなくてはいけない。

ネットに、パンフレットに出てきただけの、一般学生の名前を晒し上げるのだから。

(ちなみに、彼の名前で調べると、さっそく「(彼の本名) 商学部」で検索候補が挙がってきた。ページも出てくる。ただの一般人なのに……)

 

この文章をよく読まなかった人たちが、「ムカー!!月13万で甘えてないとかいうなコラー!!」と誤解してしまったのだろうか。だとすればサマキくんにとっても、大学にとっても、その人たちにとってもあまり良い結果ではなかった。

確かにこの書き方なら誤解を受けてもしょうがないだろう。そこは私も認める。

 

もしかすると、マンション暮らしで人間は成長しない!!という意見も出そうである。これ自体に関しては個人の意見なので私は口出ししない。

だが、甘えとか成長というのはそれぞれの価値観にすぎない(過去の自分との相対的なものでしかない)のに、それを人に押し付けて名前晒して暗闇から石投げるのは卑怯だ、と言っておこう。全員がそうとは言わんが。

意見を持つのは勝手だが、人に押し付けるのはまずい。

 

以上が、この炎上にて私が感じたこと、考えたことである。

今日もここまでご覧くださり、ありがとうございました。