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【社会】

一番必要なのは包容力 白鴎大「フォークル」で北山修さん最終講義

コンサートの司会を務めた山本さん(左)、サプライズ登場した杉田さん(右)と話す北山さん=栃木県小山市で

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 「戦争を知らない子供たち」「あの素晴(すばら)しい愛をもう一度」など数々の名曲を作詞した音楽家で、精神科医である白鴎大の北山修副学長(70)が、三月末の定年退職を前に栃木県小山市の同大で公開最終講義をした。学生に加え、一般聴講者に向け、「不確実なものや未解決のものを受容する力」の意義を説いた。 (吉岡潤)

 北山さんは、京都府立医科大時代にフォークグループ「ザ・フォーク・クルセダーズ」を結成。一九六七年発売の「帰って来たヨッパライ」が大ヒットし、朝鮮半島の分断を歌った「イムジン河」で注目された。音楽活動の一方、精神分析を専門に教壇に立ち、二〇一〇年に九州大から白鴎大へ移り、一三年に副学長に就いた。

 「『名前のないアート』について」と題した講義では、障害者の芸術作品を紹介。「分類不能なアートに出合うとしんどくなることがある。だが、訳の分からないまま心の中に置いておくことに意味がある。見る側に何かを生じさせ、心の胃袋を大きくする」と語った。

 戯曲「夕鶴」の分析なども交え、「人間は分類しようとして分類できないものを排除しようとする」と指摘し、「包容力。今、社会が一番必要としているかもしれない」と論じた。自らを「歌い手が医者になった、神様のいたずらみたいな訳の分からないもの」と表現。「そんな私を置いておいてくれた大学に感謝する」と述べた。

 講義後のコンサートでは、「岬めぐり」などで知られ、同じく白鴎大で社会学を教える山本コウタローさん(68)が司会を務め、歌手の青木まり子さんが「白い色は恋人の色」「風」「さらば恋人」など北山作品を披露した。

 さらには「戦争を知らない子供たち」を作曲した歌手の杉田二郎さん(70)も登場。北山さんは「百年後も二百年後も、みんなが戦争を知らない子供であってほしい」と語り、同曲と「あの素晴しい愛をもう一度」を会場全体で歌い上げた。

 同市の小島孝子さん(70)は「講義は難しかったけれど、包容力、異なるものを受け入れる大切さに共感した。コンサートも素晴らしかった」と相好を崩した。

 

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