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【国際】

バッハ自筆楽譜が260年ぶり帰郷 ナチス虐殺で国外流出、独で披露

披露されたバッハの教会音楽の自筆楽譜=7日、ライプチヒで、垣見洋樹撮影

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 【ライプチヒ(ドイツ東部)=垣見洋樹】作曲家バッハの教会音楽「おお永遠、そは雷(いかずち)のことば」の自筆楽譜が、バッハの死後約260年の時を経て地元ライプチヒに戻り、7日に披露の式典が行われた。持ち主が戦時中、ナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)の被害に遭い、長く国外に流出していたが、ライプチヒのバッハ資料財団が今年、198万ユーロ(約2億4000万円)で買い取った。

 財団は「バッハが音楽の新時代を切り開いた曲で彼の楽曲で最も表現力に富む作品の一つ。作曲方法の変遷を研究する上で大変価値がある」としている。

 旧市庁舎で行われた式典で楽譜が披露され、かつてバッハが指導したトーマス教会少年合唱団とザクセン・バロック・オーケストラが曲を奏でた。

 曲は一七二四年六月十一日、ライプチヒの教会で行われた祭礼のためバッハが作曲し、楽譜は全二十八ページ。作品番号二十番。何度も推敲(すいこう)した跡があり、演奏のたびに修正を加えた様子がうかがえる。

 財団によると、楽譜はバッハの死後、息子がベルリンに持ち出し、その後複数の人物の手に渡った。

 一九一七年、ライプチヒの楽譜出版社の創業者一族のユダヤ人、ヒンリッヒゼン氏が購入したが、ナチス・ドイツはユダヤ人による出版事業を禁じ、同氏はアウシュビッツの強制収容所に送られ死亡。楽譜は息子のワルター氏が亡命先の米ニューヨークに持ち込んだ。

 八二年にオークションに出され、スイスの財団が購入。この財団に購入を持ち掛けられたバッハ資料財団がドイツ政府やザクセン州のほか、一般からも寄付を募って購入資金を集めた。

 

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