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【東京】

<東京SAKE物語>(3) 甘美 チョコで利き酒

工房で「利き酒ショコラ」を作る三枝俊介さん=大阪府吹田市で

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 日本酒の華やかな香りと味がチョコレートの甘さと一緒に広がり、あっという間に舌の上で溶けた−。

 千代田区丸の内のチョコレート専門店「パレ・ド・オール」が販売する生チョコのセット「利き酒ショコラ」は、オーナーシェフの三枝俊介さん(60)が「それぞれの酒の味わいが生きるように、使うカカオ豆を変えている」と語る自信作。甘党だけでなく、日本酒好きの男性らにも好評だ。

 三枝さんによると、ウイスキーなど洋酒を使うチョコは珍しくないが、日本酒を使ったものは数少ない。水分が多いため油分のチョコと混ざりにくく、通常は日本酒の味わいを感じられるほど多くは使えないからだ。

 大阪府吹田市の工房を訪ね、製造現場を見学させてもらった。チョコ五キロに対し、使う日本酒は一升瓶一本分(一・八リットル)ほど。酒かすを溶いた生クリームと一緒に少しずつ投入し、かき混ぜることを繰り返すと水分と油分が乳化してなじみ、ペーストが徐々に滑らかさを増していく。型に流し込んで一日置き、型抜きした後さらに一〜二日置いてデコレーションを施す。

 手間はかかるが、こうした地道な作業でしか大量の日本酒は練り込めない。三枝さんはチョコ専門のシェフとして十二年。カカオ豆の状態からチョコを作り、特性を知り尽くす。「これ以上日本酒を入れると、後でカカオと分離してしまう」と説明した。

 それだけの手間をかけてまで日本酒にこだわるのには理由がある。三枝さんは十年ほど前、都心で採れた蜂蜜を使ったチョコを開発する過程で、各地で養蜂の指導をしている盛岡市の養蜂家藤原誠太さん(59)と知り合った。

 二〇一一年三月に東日本大震災が起き、「お菓子でできる支援は何だろう」と考え、藤原さんに紹介された仙台市の養蜂家阿部達夫さん(81)と一緒に被災した酒蔵を回った。日本酒をチョコに入れて売り上げの一部を寄付に充てることを思い付き、宮城県の六つの酒蔵の日本酒を使って利き酒ショコラを作るようになった。

 一箱当たり五十円を寄付に回し、材料として仕入れることで直接的な支援にもなる。ただ、狙ったのはそれだけではない。「被災地で頑張っている人たちがいることを、チョコレートを通じて発信したかった」

 震災直後は支援イベントに前向きだったデパートや同業者も、六年近くたって関心が薄れたように感じる。「どんな形でも、長く続けるのが大事なんじゃないかな」。それが今も販売をやめない理由だ。

 日本の食材は世界から注目され、海外のシェフがゆずを使ってチョコを作った例もある。ワインも日本酒も好きという三枝さんは「日本酒を使うチョコレートなら、日本人が一番おいしくできるはず。酒蔵ごとに違う豊かな味わいを、世界に伝えたい」と考えている。 (大平樹)

<利き酒ショコラ> 6個入り1800円(税別)。使っている日本酒は、阿部勘酒造店(塩釜市)の「阿部勘」、川敬商店(美里町)の「黄金沢」、勝山酒造(仙台市)の「ライトニングII」、内ケ崎酒造店(富谷市)の「鳳陽」、一ノ蔵(大崎市)の「Again(アガイン)」、角星(気仙沼市)の「別格」。新丸ビル1階の店舗=電03(5293)8877=と、ネット通販(「パレ・ド・オール」で検索)で買える。

 

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