文部科学省の天下りあっせん問題は、省が積極的に仕組み、組織ぐるみで行われていた構図が次第に明らかになった。
OBを介在させたルール破りは、あきれるほかはない。
これまでの第三者らで構成する文科省調査班報告によると、あっせんをしていた人事課OBは嶋貫和男氏(67)で、2009年の退職直後から始まった。嶋貫氏は人事課に長く、人脈も広かった。
背景には、前年末に施行された改正国家公務員法で、現職の国家公務員は再就職のあっせん行為ができなくなった事情がある。
これを受け、省の人事課などは、現職ではないOBによるあっせんを期待するようになり、嶋貫氏も「後輩たちのために」などという意識で応じたという。
人事課と嶋貫氏の間で、情報と人事資料の交換、調整が双方向で行われ、組織的なあっせん体制ができた。現職のあっせん行為を禁じた法の趣旨を骨抜きにしたといえよう。
そしてこの仕組みは官僚トップの事務次官やそれに次ぐ文科審議官らも複数が承知していた。
また13年に省内で作成された内部文書「再就職支援業務について」から、文科省が関連団体などを通じ、間接的に嶋貫氏のあっせん活動がしやすくなるよう便宜を図っていた疑いも浮上した。
組織の一部が勝手に、慣行的に、独自に、といった言葉で釈明できる事態ではない。文科省が組織として脱法システムを主導し、担当者や幹部らに引き継がれてきたといっても過言ではない。
この問題を集中審議した7日の衆院予算委員会で前川喜平・前事務次官は重大な責任を認め、わびたが、違法性の認識がなかったとした。しかし、現職の人事課員らが嶋貫氏とともに、あっせんの役割を積極的に担っていれば、法に抵触する。
官製談合など官民癒着を背景にした不正が相次ぎ、国民の政治不信、官僚不信が高まった。こうして法が改正され、現職によるあっせん行為が禁じられた。
今回明らかになった仕組みが法にもとることは、当然認識しえたはずだが、そうでないなら官僚世界は感覚や視点がずれているというほかはない。そのずれは大きい。
文科省は退職者も含め、約3500人を対象に調査を進めるという。今月下旬には中間報告、3月には最終結果を出す。他省庁の調査も行われている。実態の全容を明らかにするとともに、根底にある「感覚のずれ」を考える機会ともしたい。
それは「天下り問題」にとどまらないだろう。