坂道だらけの瀬戸内の古い街で、高校生の少女と「時間の旅人」が切ない恋をする。原田知世さんが主演した1983年の映画『時をかける少女』を見て憧れた、舞台の広島県尾道市を訪ねた。
海に迫る山の斜面に迷路のような小道と木造の家々、寺や神社が続き、住民は急な石段を上り下りして暮らす。猫たちが遊び、麓の商店街も「昭和」から時間が止まったようなたたずまいだ。
地方が過疎と衰退に悩む昨今、のどかで美しい映画の風景が変わらないことが不思議だったが、それを守るための知恵を、街の人々が集めていると知った。
若者が流出し、足が弱った高齢者の世帯は自然、空き家になる。そこを引き継ぐ移住者を募る民間のプロジェクトがあり、既に100軒を再生させた。空き店舗が出れば、ミニ美術館や若者向けの店、手作り品市などが跡を埋め、NPOや地元の大学が出店企画に協力している。
廃業した銭湯は戦前の面影のまま憩いの食堂、土産物店に改装されていた。コンビニは商店街の外れに1軒だけ。古くて新しい街づくりも一見の価値ありだ。(2017・1・19)
2017年01月19日木曜日