書評です。
ドイツ在住の筆者だからこそわかる、現在のヨーロッパの分裂に原因について書かれた本です。
昨年に話題となったイギリスのEU離脱ですが、イギリスだけでなくフランスでは「国民戦線」が、ドイツでは「PEGIDA」が、イタリアでは「五つ星運動」が、というようようにそれぞれの国でEU離脱を叫ぶ組織が勢力を拡大しています。
このような勢力が伸長する大きな影響と鳴った事件が「ギリシャ危機によるEU全体の経済危機」と「シリア内戦によるヨーロッパへの難民の流入」を上げています。
そもそもEUとは自国通貨をユーロに変更したり、シェンゲン協定による国境解放などによって自国の主権を譲り渡すことによってはじめて成り立つ経済機構です。
そのような中で、ギリシャ危機によってEU各国の利害関係がむき出しになり、それは自国中心のナショナリズムの温床となってしまいます。そのような中で追い打ちになったのが、シリア内戦による難民問題です。崇高な理念を掲げるドイツと難民を救う余裕がないハンガリーなどの国によって、EUの統合の理念が揺らぎ始め、とどめの一撃となったのがフランス同時多発テロでした。
そしてそれがイギリスのEU離脱、さらに言えばイスラム差別を煽るトランプ大統領の誕生につながったのだと思います。
この本によって、私がぼんやりと考えていたことがはっきりと言語化された気がします。これからフランス大統領選によって極右政党が躍進するのか注目を集めていますが、躍進した場合EUの分裂は決定的になるでしょう。