【2月7日 AFP】精管にジェル状の半固形剤を注入して精子を止める男性用避妊薬について、サルを使った動物実験で効果が認められたことが、6日に米学術誌「ベーシック・アンド・クリニカル・アンドロロジー(Basic and Clinical Andrology)」のウェブサイトに掲載された論文で明らかになった。精管切除術(パイプカット)を受けなくても男性が避妊できる方法として期待されている。

 米カリフォルニア国立霊長類研究センター(California National Primate Research Center)」で行われた実験は、「ベイサルジェル(Vasalgel)」と呼ばれる半固形のポリマージェルを直接精管に注入し、精子の通り道をふさぐというもの。すでにウサギでは効果が認められていたが今回、解剖学上、人間により近いサルを使って実験が行われた。

 実験では精管にベイサルジェルを注入した雄サルを雌サルと同じ環境に置き、少なくとも1回は繁殖期を迎えるようにするため最長2年にわたり経過観察した。

 研究チームは論文で「『ベイサルジェル』を注入された雄サルでは、妊娠が成立する例はなかった」と述べている。通常、雄サルと雌サルが同じ環境に置かれた場合、雌サルの妊娠率は約80%とされている。

 一方、実験に用いられたサル16匹のうち1匹の精管に精子肉芽腫の合併症がみられた。精管切除術を受けた男性の約60%でも同様の症状がみられるという。

 また重曹水でベイサルジェルを洗い流して生殖能力を回復させる動物実験は、ウサギでは成功しているが、サルではまだ実施されていない。

 ベイサルジェルの開発に資金提供している米非政府組織(NGO)のパーセマス財団(Parsemus Foundation)によると現在、人間の精管にベイサルジェルを注入する治験に向けた準備が進んでいる。(c)AFP/Mariëtte Le Roux