〔PHOTO〕gettyimages
メディア・マスコミ 国際・外交 世界経済 中国 アメリカ
「アメリカの混乱」が愉快でたまらない…中国のトランプ報道を読む
中国メディア、異例の大フィーバー!

久々の「自由に書けるネタ」

〈 特朗普(トランプ)が、メキシコとの「国境の壁」を築く大統領令に署名したが、施工業者の入札ではぜひ、中国企業を指名してほしいな。何たってわが国には、何百万人もの労働者を「雇用」して、万里の長城を7300㎞も建設した実績があるのだから 〉

〈 今度はイスラム教の7ヵ国の国民の入国禁止令を出して、大モメだな。いっそ国中にカジノを作って、高い「入国料」を取ったらどうだ? きっとアメリカが中国人だらけになって税収が増えるぞ 〉

アメリカでドナルド・トランプ政権が出帆してから、中国のインターネットやSNS上には連日、このような「特朗普」を評する様々な「声」が載っている。

中国メディアでも「特朗普」が報道されない日はない。これだけ中国メディアが、海外の一つのテーマで活況を呈したのは、習近平時代の4年余りで初めてではないだろうか?

習近平政権になってから、メディアへの統制は、胡錦濤政権時とは比較にならないほど厳格になり、いまからちょうど1年前には習近平総書記が、「全メディアが共産党の姓を名乗れ!」と大号令をかけた。この「党姓論」によって、中国メディアは意気消沈し、より一層、中国共産党の宣伝機関と化していった。

中国メディアの記者をしている私の知人たちも、会社を辞めるか、ニュース部門以外の部署に移るか、それとも唯々諾々と従って習近平&共産党の礼賛記事を報じ続けるかという三択を迫られて苦悩していた。

だが今回、まるでダムが決壊したかのように、中国メディアは「特朗普」報道を量産している。「特朗普」は、中国人記者たちが久々に、「自由に書いてよいネタ」となっているのだ。

その理由は第一に、春節(1月28日)の大型連休と重なったこともあって、党中央宣伝部から報道自粛の要請や報道の方向性に関する指示などが来ていないからだろう。

もう一つは、習近平政権や中国のインテリ層にとって、「アメリカの混乱と自壊」が、愉快でたまらないのである。

孫子の兵法によれば、「戦勝」は「次策」であり、「不戦勝」こそが「上策」である。軍事的にも経済的にも世界第二の大国にのし上がった中国にとって、世界最強国が混乱し、自壊していくのを眺めることほど「好ましい光景」はない。

 

トランプ政権による「損失」

本当に、中国の「特朗普」報道を見ていたら、あまりに量が多くて、それだけで一日終わってしまうほどだが、それらは大略、3種類に分類できる。

一つ目は、トランプ政権によっていかにアメリカと世界が損失を被っているかという報道だ。例えば、以下のようなものである。

〈 2月4日付『環球時報』 トランプの移民政策がシリコンバレー恐慌を起こす 科学技術の人材は北上しカナダへ移住

トランプ大統領の一連の反移民政策は、ビザの問題にも及ぶことが予測される。そこで外国人の比重が高いシリコンバレーでは、恐慌が始まると見て、多くの科学者や技術者たちが、安全なカナダへの移住を準備中だ。

ホワイトハウスは公民の就業機会を確保するため、いままさに「H-1B」就業ビザの法案改革に着手している。このビザの発給がさらに厳格になれば、外国人のアメリカでの就業の権利は、大きな影響を受けることになる。

シリコンバレーを例に取れば、あちこちに移民が創立した会社が立ち並び、移民はIT産業発展の活力となっている。2016年の「H-1B」ビザの申請者数は、アメリカ政府が上限としている8.5万人の3倍以上で、彼らがアメリカの労働力を十分補充している。

それがトランプ大統領の署名によって、五里霧中となるため、少なからぬ人々が、北上してカナダに行くのが最上の選択と思い始めている 〉

〈 2月4日『地球外参』 春節後にアメリカとEUの夫婦が離婚の危機に

アメリカとEUは、70年近い老夫婦だが、いまや前代未聞の「離婚危機」に見舞われている。トランプは「NATO(北大西洋条約機構)は過去の連盟だ」「EUはドイツの道具になり果てた」「イギリスのBrexitに賛成する」などと述べている。トランプは、歴史上初めてEUの分裂を喜び、EUとの緊密な連合を望まないアメリカ大統領である。

EUはすでに、アメリカがEUを、ロシアや中国、イスラムテロ集団などと同等の「外部の脅威」とみなしているのではと疑心暗鬼に陥っている。

さらに、米英同盟強化を阻止しようとするEUの態度は、妻が夫の愛人に対して取っているかのようだ。1月27日、イギリスのメイ首相は、トランプ大統領と初めて首脳会談を持った外国の指導者となった。この大晦日の「手をつないだ」記者会見は、1946年にチャーチルが用いた「特殊な関係」に形容できる関係を見せつけた。レーガンとサッチャー、ブッシュとブレア、オバマとキャメロン、そして現在はトランプとメイだ。

まさに時代環境は大きく変化してきており、反グローバリズムの潮流に乗って、よそ者を排除する国粋主義が台頭している。トランプは脱EUの動きを支持し、ハンガリーやポーランドなどと単独の貿易協定を結ぼうと算段している。

トランプはメイとの会見で、「私の母はスコットランドから来た」と発言し、父親の祖先がドイツ人であることなど興味なさげだった。

一方、アメリカとドイツの「価値観」の対立、そして経済摩擦が激化している。1月31日、ホワイトハウスのピーター・ナヴァロ国家通商会議議長は、「ドイツがユーロの為替操作をしている」と非難した。トランプ政権は、盟友のEUを裏切ることも恐れないと考えているのだ。これに対してEUも、2月3日にマルタで開いた首脳会議で、トゥスク大統領が、「外部の脅威」の中にアメリカを含めた。

「EUは新たな地政学的な政治情勢に直面している。さらに強硬な中国、さらに侵略的なロシア、イスラムテロが激化する中東、そして70年来の外交政策を転換しようとしているアメリカのチャレンジだ」 〉