特殊詐欺事件では、お金が戻ってくると偽って被害者にATMを操作させる手口が大きく増えている。
「医療費の還付が受けられます」「保険料の過払い金の払い戻しがあります」――。市役所や役場、社会保険事務所の職員を名乗る、こうした電話が始まりだ。自宅近くのスーパーやコンビニのATMに行くよう誘導。巧みにATMを操作させ、キャッシュカードで現金を振り込ませる。
警察庁のまとめでは、昨年、被害者が使ったATM約4800カ所のうち、96・5%がそばに職員らがいないATMだった。
昨年の被害総額が400億円超と深刻な水準で推移する特殊詐欺だが、官民で対策が進められている。
特に還付金詐欺被害を防ぐための一つがATM対策だ。例えば70歳以上で3年間ATMでの振り込みがない人の口座などを対象に、振り込み限度額を少額かゼロにする取り組みが効果を上げている。警察庁によると、昨年夏に始まり、1月末時点で9都県の34金融機関が実施している。
還付金名目に限らず特殊詐欺全般で「入り口」となっている電話への対策も重要だ。警察は携帯電話を特殊詐欺グループに融通する「道具屋」の摘発に力を入れている。
警視庁管内では特殊詐欺に使われる電話が携帯電話から固定電話に移行しており、昨年の被害の8割近くで固定電話が使われた。
こうした状況の中、NTTコミュニケーションズは昨年12月、約5900の固定電話を解約した。都内の通信会社がNTTから借りて客に提供していた番号だったが、利用者が特殊詐欺に使っていたとして警視庁が解約を要請したという。(編集委員・吉田伸八)
トップニュース
新着ニュース
おすすめコンテンツ
※Twitterのサービスが混み合っている時など、ツイートが表示されない場合もあります。
朝日新聞社会部