2年前の春節(1月末~2月初頭の時期の中国の旧正月)を思い出してほしい。中国から訪日客が大挙して押し寄せ、各地で「ホテルの予約が取れない」という悲鳴が飛び交ったのはご記憶のことと思う。
内外の旅行客はもとより、出張者や受験生までもが「宿の確保」に奔走させられた。都心のビジネスホテルの中には、素泊まりで1泊3万円台の値段を設定するところも現れた。ホテル難民の足元を見るホテル側の姿勢に辟易させられたものである。
だが、あれから2年の月日を経て、今年はちょっと様子が違った。
■ 春節でもホテル投げ売り?
例えば、1月半ばに舞い込んできた新聞の折り込みチラシ。目を引いたのはその価格だ。静岡県の温泉宿が1泊2食付きで7980円、山梨県の宿は8800円と「お得な宿」が満載である。食事も「カニの食べ放題」や「活アワビ踊り焼き」など大盤振る舞いだ。かきいれどきの春節直前なのに、こんなに安くていいのだろうか。
同じ時期にテレビでも「お得な宿」のCMが流れた。あるホテルチェーンが、1泊2食付きで1万円以下という安さを大々的にアピールしていた。
西日本でホテル業を営む経営者は、そのテレビCMについて「中国の旅行社が春節の団体客を当て込んで大量に発注したものの、キャンセルが相次いだのではないか」と推測する。ホテル側はその穴を埋めるために、急きょこの時期に日本人向けにCMを流しているのではないかという見方だ。
■ 富士山麓のホテルにも異変
東京~富士山~大阪を結ぶ「ゴールデンルート」といえば、訪日客が最も集中する行程だ。ここでも異変が起きていた。
中国人にとって、富士山を見ることは日本旅行の目玉の1つである。2年前ならば、この時期に富士山周辺の宿を取ることはできなかった。だが今年、春節期間に泊まれる御殿場・富士エリアの宿泊施設をネットで検索すると、57件もヒットした。素泊まりならば5000円以下で泊まれるところもある。
現地のホテルに問い合わせてみたところ、次のような回答が返ってきた。「今年の春節は、中国の個人客は何組かいらっしゃいますが、団体のお客様はいないのです」 過去には30~40名ほどの中国からの団体客を扱ったこともあると言うが、「なぜか今年の春節は来ない」のだという。
読み込み中…