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伊賀で発見、イルカの化石の今 新種認定、「村の宝」に

夏の企画展では、ニンジャデルフィスの骨格レプリカが登場した=伊賀市の上野歴史民俗資料館で

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 十九年前に旧大山田村(現伊賀市下阿波)で発見された約千七百万年前のイルカの化石。世界でも数例目という淡水性のガンジスカワイルカの祖先にあたると判明し、村は歓喜に沸いた。あのイルカ化石はどうなったか、今を追った。

 「村の宝だ」「ロマンがある」。化石発見から三年後の二〇〇一年、名古屋大大学院の研究チームの鑑定で明らかになった。当時の本紙でも一面で大きく報じられた。

 化石は村を流れる川の河床で氏原温(うじはらあつし)名古屋大大学院准教授(58)らが偶然発見した。保存状態の良い全身骨格で、特に頭部が丸々出てきたことが、その後の研究の大きな手掛かりとなる。

 当時、院生として現場に立ち会った木村敏之さん(46)=現群馬県立自然史博物館学芸員=は、研究を引き継ぎ、昨夏、米研究者と共著で論文を発表。新種と認定された。

 これまで、インドなどに住み絶滅が危惧されるガンジスカワイルカの祖先という点までは分かっていたが、今回、その仲間の別科「アロデルフィス科」に属する新種と特定した。この科は、約二千四百万年前から千六百万年前に北太平洋の沿岸を中心に分布した原始的なカワイルカの一種で、体長は五メートルほどと推定される。ゆっくりと泳ぎながら、長い首とくちばしを素早く動かし、魚などをつまみとっていたという。

 興味深いのは、淡水性のガンジスカワイルカの別科が当時海だった「阿波層群」と呼ばれる地層から見つかったこと。世界中の海で繁栄したガンジスカワイルカとその仲間だが「なぜ衰退していったのか知る手掛かりになる」と今回の発見の意義を語る木村さん。新種は頭や耳の骨の形が独特だったことから「首まわりの筋肉が発達しており、左右により素早く首を振って捕食できたのでは」と分析する。

 新種と認定されるには、査定を受けた論文を発表し、世界から異議がでないことが条件。木村さんらは頭の骨の構造を徹底的に分析し、米の博物館をはじめ、世界各地の大学などでこれまで確認された仲間の標本と比較研究を重ねてきた。

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 岐阜県瑞浪市にある化石博物館の柄沢宏明学芸員(52)は「各部の骨の比較が詳細で新種と認定できる」と論文を評価する。「この化石のイルカが生きた時期は種の分化が進んだ時期で、認定の意味は大きい」と期待した。

 新種は木村さんが「ニンジャデルフィス(属)ウジハライ(種)」と命名。化石の発見者である氏原さんの名前と伊賀忍者のニンジャを組み合わせた。「外国人にも分かりやすく、地元の人にも親しんでもらえるよう“ニンジャ”を入れた」と思いを込めた。

 昨夏、市中心部の上野歴史民俗資料館ではこの骨格のレプリカが、生態復元図とともに展示されたが、いまだ認知度は低い。「ニンジャイルカ」が過疎化が進む大山田地区の新たなまちおこし資源となりうるか。「まずは地元の者が、見識を深めるところから始めたい」。十六年前の村長の言葉が思い出される。

 (飯盛結衣)

 

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