トランプ米大統領は、民主社会の根幹である「三権分立」を理解していないのではないか。

 すべての難民や、中東・アフリカ7カ国の国民の入国を一定期間禁止した大統領令に対し、司法が待ったをかけた。

 西部ワシントン州の連邦地裁が「州の雇用、教育、産業に悪影響を及ぼす」として、本訴で判断が出るまで大統領令の効力を一時停止した。政権は上訴したが、控訴裁は退けた。

 この大統領令をめぐっては、信教の自由や市民の平等という、米国の建国以来の理念に反するとの批判がおきている。

 憲法違反の疑いが指摘されるだけでなく、多くの移民を雇用する米企業が打撃を受けかねない。米国で学ぶ若者が里帰り先から戻れなくなるなど、市民の「実害」も出ていた。

 司法判断により、入国禁止の措置は解かれ、ひとまず混乱は回避される方向だ。ここは、独立した司法の機能がきちんと果たされたと評価したい。

 しかし、なお問題が続くのはトランプ氏の反応だ。司法に対し怒りをあらわにしている。

 司法の決定内容に不服を表すことは過去の大統領もあった。だがトランプ氏の場合、「いわゆる裁判官」と判事を軽蔑し、「法の執行をこの国から根本的に取り上げる裁判官の意見はばかげている」と、司法の権限への疑問まで示唆している。

 大統領も、司法と議会のチェックを受けるのが三権分立だ。その大統領が、判事の資質をおとしめたり、司法の独立を問題視したりすれば、米国の立憲主義が危うくなる。

 浮き彫りになったのは、議論を尽くさず拙速な大統領令に走るトランプ政権の危うさだ。

 そもそも、入国禁止の対象とされたシリアやイラクなど7カ国の出身者が、米国内で大きなテロを起こした前例は確認されていない。

 むしろ最近は、国内で生まれ育った若者がネットを通じて過激思想に感化されて起こすテロの危険性が指摘されている。

 特定宗教の排斥と、それに伴う反米感情がテロの土壌を生むことを考えれば、トランプ政権の対応こそが米国をより危険にしている可能性がある。

 この問題で米社会の賛否は割れている。トランプ氏の強気の背景には、大統領選で示された自身への支持が続いているとの思いがあるのかもしれない。

 だがこれ以上、米社会を分断させる振るまいは慎むべきだ。いま専念すべきは、国民の統合と世界の安定に向けた政策を練る政権の態勢づくりである。