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文科省の天下り、周到に構築 歴代次官らも認識

2017/2/7 0:07
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 文部科学省による組織的な再就職あっせん問題で、人事課OBを仲介役とする脱法的なあっせんの体制づくりを同省が主導的に進めていたことが6日、分かった。OBが役職を失うことになった際には短時間勤務でも高収入が得られる別ポストの用意を急ぐなど、体制を維持するための工作に組織ぐるみで取り組んでいたことも明らかになった。

天下り問題について記者会見する松野文科相(6日午後、文科省)

 OBの嶋貫和男氏(67)はこれまでの取材に「文科省に頼まれて仲介をしていたわけではない。ボランティアだった」と説明していた。しかし松野博一文部科学相が6日に公表した調査結果によると、同省側は嶋貫氏を出先機関のように位置づけ、安定的に天下りの仲介を続けられる体制を構築していたとみられる。

 その一端が表れたのが2013年の嶋貫氏を巡る動き。同氏は09年7月に同省を退職後、保険代理店の顧問と一般財団法人「教職員生涯福祉財団」の審議役に就任し、職員の再就職の仲介を始めていた。天下り規制を強化する改正国家公務員法が08年末に施行され、それまでのような人事課によるあっせんができなくなったためだ。

 だが13年秋になると、財団から「仲介は財団の業務と直接関係ない」と指摘され、同省は嶋貫氏を財団から「外形的に独立」させる必要に迫られた。この時の具体的な対応が、省内調査で見つかった「再就職支援業務について」と題する資料(13年9月11日付)に記されていた。

 同省はまず、財団に代えて有限会社「国大協サービス」(東京)に嶋貫氏が在籍しながら仲介を続ける案を模索。だが、同社から受け入れ困難との見解が示されると、嶋貫氏が週に1~2日、保険会社顧問となり、残りの3~4日で再就職支援に当たる案を示した。

 資料には「再就職支援は、嶋貫氏ができるだけ早く個人のNPO事業として実施する方向で調整」と記載。顧問職については月に数日程度の勤務で年収1千万円という具体的な条件が書かれていた。

 「秘書給与(年額400万)、執務室、OB用サロン(併せて月30万)」といった記述や、これらの費用を財団や公益財団法人「文教協会」が嶋貫氏に業務委託する形でまかなう案も盛り込まれていた。こうした動きは歴代事務次官らも認識していたという。

 実際の嶋貫氏は13年末に財団を退職。14年1月には大手生命保険会社の顧問の職に就くとともに文教協会の参与に就任。同協会が用意した「分室」を使い、財団が給与を負担した職員が協会を通じて秘書として派遣された。16年4月には一般社団法人「文教フォーラム」を設立。分室や職員を引き続き利用した。

 大手生命保険会社によると、嶋貫氏は有給だが勤務は月数日程度だったといい、文科省が資料で描いた形がほぼ実現したことになる。同社では「法人営業に助言をもらっていた。就職時に文科省からの推薦などはなかったと聞いている」としている。

 嶋貫氏はキャリア官僚ではなく、いわゆるノンキャリの職員だった。政府の再就職等監視委員会は6日公表した調査報告書で、文科省は「実務負担が軽く年収の大きなキャリアポスト(キャリア官僚の天下り先)と目される再就職先など」を嶋貫氏に複数あてがったと指摘。背景には「(嶋貫氏による仲介を)継続させたいとの人事課及び事務次官らによる了承行為が存在した」とした。

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