精神的に病んでしまって働けなくなった時、一番の心配はお金のことでした。これから先の人生、どうやってお金を稼いでいこう。いつになったら働けるのか?そんなことが不安でなりませんでした。
そんな時に、アルミ缶を拾って生計を立てている人に出会いました。それも図書館で。その人はホームレスのイケメンなおじ様でした。まさにちょい悪おやじ風の。
[ Title : お金の悩み 2017年1月 ]
[ Camera : Nikon D700 ]
[ Lens : Nikon AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G ]
お金の心配を手放すために
体力の回復に合わせて、社会復帰を目指して図書館に通っている時期がありました。毎日朝の9時から12時まで、お昼をはさんで13時から17時まで、少しずつ時間を延ばしながら通っていました。
毎日通っていると、いつも同じ顔を見ることに気がつくようになります。「あ、あの人昨日もいた」「そういえば毎日いる」「必ずこの席に座っている」などなど。
ホームレスのかっこいいおじ様もその中の1人でした。ある日、声をかけられたんです。「最近よく見るねぇ。どうしたの」と。
ホームレスのおじ様によると、「空調が効いているから暑さ寒さが防げる」「トイレがある」「水が飲める」「ただで利用できる」「暇がつぶせる」などの理由で、浮浪者には最高の場所だそうです。図書館は。
そのおじ様は、もともとお父さんをやっていましたが、いろいろあってホームレスになったそうです。詳しくは教えてくれませんでした。
ただし、図書館の本はほとんど読み終わったそうです。まじかい!たぶんその辺にふらついている大学生よりも博識なんじゃないでしょうか。朝は新聞を3紙以上読んで、新しく入ってきた図書を読むそうです。
そんなおじ様に僕は、「精神的に病んでしまって働けないこと」「お金の心配があること」「将来が不安であること」をさりげなーく相談してみました。
そして、教えてくれたことや話してくれたことを紹介します。
制度を知る
最初に教えてくれたことは、生活保護の制度と障害者年金の制度のことでした。おじ様いわく「日本は良いよね。だってその辺に死体が転がってないじゃないか」と。
[ Title : お金の悩み 2017年1月 ]
[ Camera : Nikon D700 ]
[ Lens : Nikon AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G ]
生活保護制度
日本国民である以上、ある一定の条件を満たせば生活保護の制度を利用することができます。僕は生活保護の制度を利用することなんて、考えたことがありませんでした。
やはり、アルミ缶を拾って生計を立てている人は、「なんか違う」と思いました。
「本当にお金に困っても死ぬわけじゃない」と、ホームレスのおじ様は教えてくれました。君の不安は死ぬことが怖いわけじゃぁないだろうと。それこそゴミを拾ってそれをお金に換えて生きていくこともできるわけです。
そして、生活保護の制度は、あくまでも一定の条件を満たすと受給できるものであるということを強調していました。
一定の条件を満たさないとは、家族や親せきにある程度のお金がある場合や土地がある場合など、ようするに、「まだそんなにピンチじゃない」という状態の時を示すそうです。
本当に生活ができないくらいにピンチになったとき、そういうものが使えることを知っておくことが大事だと、そういう話だと思います。
また、生活保護の制度は、永遠に利用し続けるものではなくて、あくまでも一時的なピンチの時に形成を立て直すために利用する緩衝材のようなものだと話していました。
「仕事が原因で自殺する人が多いんだろ?」「死んでしまえば元も子もないけれど、こういう救済措置があるんだからそれを利用すればいい」
「一時的にでもこういう頼れる仕組みがあることを知っていることが心の逃げ場になる」と、おじ様は話していました。確かに。その通り。こういうことって学校では教えてくれないですよね?
障害者年金制度
精神障害は今のところ一般的には認定されないようだけれど、障害者年金という制度があります。「体を壊してしまって万が一働けなくなった時には、こういう制度もある」と教えていただきました。
だから、「将来もらえないかもしれない年金だけど、保険代わりに払っておく価値はあるのでは?」と言っていました。
そうか。そういう考え方もあるんですね。ちなみに、ホームレスのおじ様は、「日本を信用してないから払っていない」そうです。ん?何か曲げられない意志を感じました。
現状を知る
「ところで今、毎月何にいくらかかっているのか、分かってる?」と聞かれて答えられない僕がいました。
[ Title : お金の悩み 2017年1月 ]
[ Camera : Nikon D700 ]
[ Lens : Nikon AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G ]
お金の使われ方
住民税、年金、健康保険など、国民の義務として払う種類のお金。食費、家賃、洋服代など、人間らしく生きていくためのお金。それ以上のお金。
「そもそも国民として最低限生きていくために必要なお金は、所得が少ない人はそんなにかからないはずだよ?」と言われました。
主婦の場合は、家族の食費、子供の教育費、住宅ローン、その他もろもろを抱え込んでしまって1人で大変なことになっている人もいるけれど、「少なくとも子供も配偶者もいない君はずっと自由なはずだ」と。
うぐ。
おっしゃる通り。
貯金は必要?
また、家族を持って大変な思いで暮らしをしている人達も、貯金が無いことや先行きの不透明さが不安になっているだけで、現状の暮らしに関してはまったく問題ない場合が多いと話していました。
「この後の人生、一生食べていくことを考えるから不安になる」「例え職にあぶれたとしても、半年はやっていけるくらいの貯金があれば、失業手当と合わせれば1年は何とかなる」
「それで十分じゃないか?」
「精神的に病んじゃって、就労できなくなるよりよっぽどマシだろ?」と、精神的に病んじゃった僕に対して、なかなか辛口なトークを繰り広げるおじさん。きついぜ。
欲望を知る
「結局君はさ、何がしたいんだい?」ホームレスのおじさんに問いかけられます。正直に答えられない僕がいました。
[ Title : お金の悩み 2017年1月 ]
[ Camera : Nikon D700 ]
[ Lens : Nikon AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G ]
他者との比較
もっとお金を稼ぎたいという謎の欲望。同世代でも成功して一見すると幸せそうにお金を稼いでいる人達。残業によって過ぎていく時間に対する焦り。
「結婚したいのか?」「子供が欲しいのか?」「家が欲しいのか?」「車が欲しいのか?」「そういった欲望が多すぎるのではないかい?」ホームレスのおじ様に問い詰められます。
「全部を得ようとするからお金がない!ってことになるんだと思う」とおじ様は話していました。「隣の芝は青く見えるけれど、本当にきみが欲しいものは何なんだい?」と。
ここでおじさまに『もしも世界が100人の村だったら』という話を例に出されました。そもそも、「君は、いまここで日本国民として生まれてくることができた時点で、スーパーラッキーボーイなんだ!」って話をしてくれました。
だって、「それこそ働かないで何もしなくても、死なないんだからね」って。「もちろん僕もね」と。
うぐ。
あれもしたい。これもしたい。自身を見つめることで、欲望にまみれた自分の心を知ることができる。失いたくないものが多すぎるから(それくらいに今が豊かだから)不安になるってことに気がつける。
うぐ。
もうね、ホームレスのおじ様の言うことに、ぐーの音もでませんよ。
少子化について
ちょっと面白いことを話してくれました。君は「お金が無いから結婚できない。子供も考えられない」と言うかもしれないけれど。動物の世界をのぞいてごらん?
野生動物って、状況がピンチであればピンチであるほど、子沢山じゃない?子供の時の生存率が低い動物ほど、繁殖回数が多いよね。
「もしも、お金が無いことが生存率に直結しているのだとしたら、もっと繁殖活動してもいいはずじゃない?」
んー、確かにそういう目線で地球を眺めることはできるかもしれないけれど、これはどうなんでしょうか。
さすが、ホームレスのおじ様。図書館の本をほとんど読んでいるだけはあって、視点が違います。
「君が本当に結婚して子供が欲しいのならば、そのために稼げばいいと思う」「そのためならばつらくても働ける理由になるから」と、話していました。
ふむ。
『心配事の9割は起こらない』も読んだことがあるそうです。おじ様いわく、心配することは起こらないけれど、心配していた以外のことがどんどん起きるそうです。結果、「ちゃら」と言っていました。
働き方に対して
もしかして、「大企業で働きたい」とか「好きな仕事がしたい」とか、そういう「眠たいこと考えてない?」と言われました。
うぐ。
本当にお金に困って国の制度を利用するような状況になると、「働くこと」と「お金を得ること」に対する価値観が変わってくるそうです。
ホームレスのおじ様にちゃんと話を聞いたんですが、意図がよく理解できませんでした。
なのでここからは推測ですが。
「働くこと」だけが「お金を得ること」にならない。「働かなくても」誰かが働けば「お金を得ること」ができる。というような、そんな話でした。
お金を得ようと思ったらいろいろな方法があるわけだから、「そんなに焦らなくても大丈夫」と、そういったことが話の趣旨だったと思います。
[ Title : お金の悩み 2017年1月 ]
[ Camera : Nikon D700 ]
[ Lens : Nikon AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G ]
さいごに。
空き缶を拾っても生きていける!
死体は転がっていない!
現状を確認!
欲望を認識!
話していてとても楽しい人なんです。どうしてホームレスをやっているのかよく分かりませんが、本人はとても楽しそうで幸せそうなんです。