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こういう本って女性が支持するんだよね,
2014/6/8
レビュー対象商品: 男子の貞操: 僕らの性は、僕らが語る (ちくま新書 1067) (単行本)
「僕らの性は、僕らが語る」というサブタイトルの通り、「僕たち」「僕ら」といった語り口で書かれた本。その時点で、何か抑圧的なものを感じてしまう。
「同じ女性として」
という表現を深澤真紀は、「女性の多様性を否定している」といった風に言ったが、使われ方は別だが、「僕ら」というのもどこか共感の強要と排他性を感じさせる表現だろう。
まあ、著者のセックス観ーー生涯で数人パートナーがいるので満足するべきーーというのが理解できるなら良い本なのかもしれない。逆に漁食家の男性は渡辺淳一や島地勝彦のエッセイあたりのほうが、処方箋としては有効だろうと思う。
類書ということだと、森岡正博「草食系男子の恋愛学」あたりか。岸田秀なんかもかな。男性が性について語っている本って、女性の支持が多かったりする。
これらのベースの価値観としては、コミュニケーションの延長線上に性があるべき、ということだが、男性がセックスに対してそういうスタンスを持つことへのインセンティブが希薄なので、まあ広く読まれて支持される「古典」にはなれなかったりする。
追記:ちょっと評価が厳しかったかもしれないが、試み自体は評価している。色々な考え方のサンプル、ロールモデルがあるほうが、読者にとっては有益だ。
ただ、媒体として「ちくま新書」という固めのレーベルを選んでいる点で、インテリ向け・比較的読者の年齢層が高めとなるだろうから、肝心の若い層にリーチしない。
あと、これは「コミュニケーション強者」の比較的性欲が薄い男性向けの本だと思うので、そういう本を女性が支持するというのは、やはり不毛なことだと思う。(特に、男の子を持つ母親などが読んだりすると)
再追記:「記号」で全て片付けるのはやはり無理がある。むしろ問題は記号ではなく「物体」だろう。たとえば、AKB人気は、結局のところ10代の若い女性の肉体(=物体)に多くの男性が惹かれているということ。アイドルグループという「記号」に惹かれている、で説明がつくだろうか?
イデオロギー的に賛同できないというのもあるが、分析自体も駄目な本だと思う。
再々追記:「非モテ」ということで書いてる人がいるが、戦争発言で有名になった赤木智弘の「女性の人権」発言というのを最近知った。フェミニズムを内面化しているような男性(かつ、もてない)にとっては、うん、駄目だろうな。
2014/11追記:古市憲寿の「子供も性行為も汚いから嫌い」発言というのがあったとか。著者よりもラディカルな主張と実践ということだと思うが、まあ体外受精が一般化した現代では性行為自体が生殖目的でも「必要」とは限らないわけで。色々な主張が出てくるものだ。
2016/02追記:感想としては最初にレビューを書いた時点と変わらないが、男性の生涯未婚率20%~30%という数字、つまり男性の3~5人に1人は一生結婚できない(たぶん、恋人もいない)という社会的現実を考えるに、性風俗は必要悪だと思うようになってきた。童貞のまま死ねというのは酷だ。
もちろん「貞操」という観点から否定する言説があっても良いと思うし、私自身は別に利用しないのだが、国民の性的自由というのは制約されるべきではないし、こういう理想論が広く支持されるのは苦しむ人が増えるだけだと思う。(上にも書いたが、母親が息子にこの本を読ませたりするのは最悪だと思う)
まあ、フェミニストの著者に対する、クィア理論・マスキュリズム的なところからの批判ってところです。性についても多様な価値観が並立すべきでしょう。
2016/03追記:自分の考えを整理させてくれた、というところではこの本には感謝している。要するに著者は、保守的なロマンティックラブイデオロギーに近い立場なのだろう。性と恋愛と結婚を分離させない、という思想、イデオロギーというところ。婚前交渉禁止までは言わないにしても、本質はそこにあるのだろう。
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