廃炉の道が、従来の想定よりも一段と険しいことが浮かび上がった。
炉心溶融を起こした東京電力福島第1原発2号機で、原子炉圧力容器の下部に初めてカメラが入った。作業用の足場に堆積(たいせき)物があることが確認された。溶融した核燃料の可能性が高いと見られている。
東日本大震災から6年近くを経たが、内部が確認できたことは、廃炉作業にとって一歩前進だ。
だが、東電の解析によれば、現場の放射線量は1分足らずで人間が死亡するほど高く、溶融燃料と見られる堆積物は広範囲に飛散していた。東電はカメラ付きのサソリ型ロボットを月内にも投入し、本格調査する予定だったが、見直しを迫られた。
このままでは、30~40年かかるとされる廃炉期間が拡大し、2兆円から8兆円に見直された廃炉費用もさらに膨れあがることは確実だ。
廃炉費用は東電が負担することになっているが、結局は、電気料金を支払う消費者の負担となる。
技術開発の進め方は妥当か。廃炉費用を抑制する方策はないのか。政府と東電は、事故対応のあり方を、抜本的に見直す必要がある。
福島第1原発事故では1~3号機で炉心溶融事故が起きた。政府と東電の廃炉工程表では、2018年度に1~3号機のいずれかで溶融燃料の取り出し工法を決め、21年中に取り出しを始めることになっている。
そのためには、溶融燃料がどこにどのように分布しているかや、性状を把握しておく必要があるが、いまだによく分かっていない。
今回、2号機は内部調査の入り口でつまずいた。それでも1、3号機よりはましだ。この2基は水素爆発で原子炉建屋が壊れるなど損傷が激しく、調査はうまくいっていない。
炉心溶融が起きた1979年の米スリーマイル島原発事故では、溶融燃料の取り出しが始まったのは事故から6年後、作業が終了したのは11年後だ。溶融燃料は圧力容器内にあり、内部を水で満たして放射線を遮りながら遠隔操作で取り出した。
福島第1原発1~3号機は圧力容器外に核燃料が溶け出ており、作業はより困難だ。取り出した溶融燃料の保管方法や場所も未定だ。政府と東電は内外の英知を集め、一層の技術開発に取り組むべきだ。
廃炉工程を考える上で、忘れてはならないのは、廃炉の進展度合いが地域の復興や住民の帰還にかかわることだ。その一方で、無理な作業工程を設定すれば、作業員の労災や被ばくのリスクを高めかねない。
困難な道のりだが、政府と東電には、情報公開を徹底するとともに、廃炉の課題を着実に克服していく取り組みが求められる。