板垣幸司30戦目で初のタイトルマッチ 地元広島で一世一代の大勝負
「デイリー後援・ボクシング・WBO・APライトフライ級王座決定戦」(12日、NTTクレドホール)
プロボクシングのWBOアジアパシフィック・ライトフライ級王座決定戦12回戦が、広島市のNTTクレドホールで行われる。プロ30戦目で初のタイトルマッチに挑むのは広島市出身で同級3位の板垣幸司(33)=広島三栄=だ。元日本王者で同級1位の堀川謙一(36)=京都SFマキ=と対戦する。広島のジムから初のアジア王者誕生が懸かる大一番。応援してくれる多くの人の思いを力に変えて、地元で悲願の初戴冠を目指す。
決戦のゴングまであと1週間。最終調整に入った板垣の練習は熱気を帯びてきた。キレのある動きが状態の良さを物語る。「ここまでは順調です。減量もうまくいっているので、いいコンディションで迎えられそうです」。亜也子夫人(31)が食事面を管理してくれており、独身時代に比べれば、格段に減量が楽になったという。それは結婚後5勝1敗という好成績にも表れている。
プロ13年目、通算30戦目で初めて巡ってきたタイトルマッチの大一番だ。これまで広島のジムからは2人の日本王者(新鬼丈、中広大悟)が誕生しているが、アジア王者や世界王者はまだいない。板垣が勝利すれば、広島ボクシング界にとっては初の“インターナショナル王者”誕生という快挙となるのだ。
対戦相手の堀川は元日本王者。2015年12月に京都で行われた初防衛戦は、板垣も足を運んで観戦したという。「その試合で堀川選手は負けてしまったんですが、フィジカルが強く、テクニックも経験も豊富な選手だと感じた。ただ、相手のガツガツくるペースに巻き込まれず、冷静に戦えれば自分にも勝機はあると思います」。過去の試合のビデオもチェックし、入念な対策を立てている。
王座獲得への思いは人一倍強い。「たくさんの人たちに応援してもらっているので、なんとか『チャンピオン』という形に残るものがほしい」。亜也子夫人は宮島で必勝を祈願し、「勝」と書かれたお守りを買ってきてくれた。板垣の勤務先であるクリーニング会社「日本基準寝具」の同僚は、試合がある時はいつもチケットを購入し、横断幕を持って応援に駆けつけてくれる。14年に一度は引退を決意した板垣に再起を促し、今回のタイトルマッチ実現に奔走した所属ジムの藤本雅義会長(53)にも勝利という形で恩返ししたい。
藤本会長は「板垣にとっては一世一代の大勝負。プレッシャーもあると思うが、それをモチベーションに変えて、きっと勝ってくれると信じている」と力を込める。勝てば世界ランク入りし、世界王座への挑戦も見えてくるが、板垣は目の前の戦いに集中する。「ここで負けたら年齢的にも次のチャンスはない。自分にとって集大成の試合になる」。不退転の決意でリングに上がる覚悟を示した。