米宝飾品大手のティファニーは5日(米国時間)、フレデリック・キュメナル最高経営責任者(CEO)が辞任したと発表した。中国の景気停滞などを背景に、新興国の富裕層や観光客への販売が落ち込み、業績低迷を打開する手立てが打てなかった。トランプ米大統領が住んでいた「トランプタワー」の隣にあるニューヨーク市内の本店が警備強化の影響で売上高を落としたことが「ダメ押し」になったとの見方もある。
ティファニーの主要顧客は、米国や欧州、アジアの主要都市の店舗を訪れる観光客や新興国の富裕層。昨年は、英国のEU(欧州連合)離脱など政治的な混乱が相次ぎ、観光客や富裕層の購買意欲を低下させたもようだ。2016年2~10月期の既存店売上高はドル高の影響を除いても前年同期比7%減と振るわなかった。
秋以降には、トランプ旋風の「巻き添え」にもなった。ティファニーの本店は映画「ティファニーで朝食を」の舞台として知られ、売上高の約1割を占める重要な店舗とされる。しかし、トランプ氏の身辺警護の強化で、本店周辺は気軽に歩いてショッピングを楽しむ雰囲気ではなくなった。昨年11~12月の年末商戦では、本店の売上高は前年同期比14%減と急減したという。
キュメナル氏は2015年春にコワルスキー氏(現会長)の後継者としてCEOに就任したばかりだったが、2年足らずで退任となった。後任はこれから探す予定で、当面はコワルスキー会長が暫定CEOを務める。コワルスキー会長は「最近の業績は満足のいくものではなかった」とコメントを出している。