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 空を見上げれば電柱と電線が視界に入る。日本の道路の無電柱化率は1%と、先進国で断トツに低い。電柱は災害時に倒壊すれば、避難路をふさぎ、電線が垂れ下がる危険もある。

 昨年12月、無電柱化推進法が施行され、国や自治体、電力・通信事業者が責任をもってとりくむよう定められた。今後は無電柱化を加速させるべきだ。

 いま日本には約3550万本の電柱がある。年に7万本ずつ増えている。政府は1980年代から電線を地中に埋める事業を進めてきた。だが、比較的進んでいる東京23区でも7%、大阪市で5%にとどまる。

 ロンドン、パリ、香港で100%、台北95%、ソウル46%と比べても少なさがきわだつ。

 日本では終戦後、復興を優先し、安価で短期間に工事できる電柱で電線を張った。それが見直されないまま時がすぎた。

 細い道路事情や、当初から地中に埋めた他国との差はあろう。しかし道路は国土交通省、通信は総務省、道路使用は警察庁、電力は経済産業省など、縦割り行政が意思決定の遅れを招いたとの批判も強い。省の壁をこえて協力すべき時だ。

 問題はコストだ。道路の下に管を埋め、ケーブルを通すと、1キロあたり5・3億円かかる。3分の2は国と自治体、残りは電力や通信事業者の負担だ。

 国交省は線を入れる管を浅い層に埋めるなどし、従来より最大3割削減できると提案する。だが、劇的な普及には不十分だ。関連企業をまきこみ、さらに安い工法を開発し、事業者や自治体が踏み切りやすい環境づくりにとりくんでほしい。

 災害の際、電柱は凶器になる。東日本大震災では約5万6千本、95年の阪神大震災でも約8千本が倒れるなどし、消防車が通れず、避難者や救援の行く手を遮った。03年の台風では沖縄県宮古島市で800本、13年には埼玉県越谷市で竜巻により46本が損壊した。

 首都直下地震が心配される東京都では、小池百合子知事が無電柱化推進条例の制定や、都道での新設禁止をとなえ、東京五輪に向け整備を進める。昨年すでに条例をつくった茨城県つくば市、観光に力をいれる京都市、金沢市も前向きだ。

 こうした自治体が広がり、その動きを政府が資金面や技術開発で後押ししていきたい。

 住民の協力も欠かせない。電線の地中化は地上機器の置き場が必要な上、停電時は電柱より復旧に時間がかかるとされる。社会が無電柱化に関心を持ち、理解を深めることが大切だ。

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