こんにちは、片山和秀です。
今回は不倫の慰謝料請求の際に問題になりやすい求償権に関して取り上げていきます。

求償権とは？

求償権とは、ローンの支払いなどに際して生じる返還請求権のことです。借金を肩代わりした人が、代金を請求できる権利、と考えると理解しやすいでしょう。
但し、不倫の場合は求償権の意味合いが少し異なります。
不倫の求償権は慰謝料請求されたことに関係します。
噛み砕くと「本来あなたも支払うべき金額を私が建て替えて払っているから、あなたの負担分を返して欲しい」という主張ができるのが求償権です。

求償権を主張して慰謝料の負担分担を請求できるか？

私の弁護士事務所に相談をされる方の中にも、求償権をご存知の方がいらっしゃいます。
慰謝料請求をされた、もしくは慰謝料を払ったが、求償権を主張して不倫交際していた相手にも支払わせたい、という主張は通るものなのでしょうか？

そもそも、不倫というのは配偶者とその交際相手、両人に責任があるものです。
不倫は二人で行っているため、その当事者が責任を持つ、という形ですね。
そのため、慰謝料請求をされている立場でも、不倫の交際相手に分担を請求する権利である求償権が生まれるのです。
求償権で主張できる分担はおおよそ5割が基本であり、不倫の行為をどちらが積極的に行っていたかという要素も考慮して分担の割合を決めていくことになります。

求償権の主張が通るケースは限られる

例えば夫が妻以外の女性と不倫行為をしたとして考えてみましょう。
妻は離婚をせず、女性に対してのみ慰謝料100万円を請求したとします。
請求された女性が求償権を主張し、夫に5割の50万円を主張する、というケースです。
これは一見正当な主張にも思えます。
但し、実際にこのようなケースですと求償権の主張は難しいといえます。
何故か？

ポイントは妻が夫と離婚をしていないという点にあります。
その場合、夫婦関係を継続していこうという考えでいることになりますから、不倫の交際相手である女性から求償権を主張されれば夫が金銭を支払うことになります。
当然そうなれば家計にも少なからずの影響が出ます。
そこで、妻と夫で協力的な姿勢があれば、「元々慰謝料の請求額は200万円だった。女性には半分の100万円を請求しているので、女性は200万円の5割である100万円を自身の本来負担する分として支払っただけだ」と主張することもできます。
求償権は本来よりも多い金額を建て替えて支払っていた際に生じる権利ですから、本来通りの金額を支払っている場合には発生しない権利になります。
例え女性が異を唱えたとしても、夫には実際に100万円を支払ってもらったと主張されればそれまでです。

そのため、夫婦間で離婚していない場合、妻が慰謝料請求をして、その後の責任の取り方は当事者に任せる、というケースでないと求償権の行使は難しいでしょう。
但し、私も実務上、離婚が成立している場合には、不倫の当事者同士のやり取りには干渉しないという方が多いですから、夫婦間で離婚している場合は求償権を主張できる可能性も高くなります。
求償権を主張してのやり取りは妻には関係なく、不倫の当事者同士で行われる事になります。

不倫の慰謝料を請求する側であれ、慰謝料を請求された側であれ影響があるのが求償権ですから、その仕組を知った上で慰謝料の交渉・決定をしていくことが重要となります。
求償権の配分や、それを元にした交渉などは複雑化することが多いため、悩んだ際は弁護士に相談することをお勧めします。

(弁護士：片山和英)