東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 筆洗 > 記事

ここから本文

【コラム】

筆洗

 「死にたい」という言葉の裏には「生きたい」という思いが張り付いている。絶望と希望は表裏一体。であれば、目を背けがちな絶望について、もう少し考えてみてもいいのではないか。そんな思いで編まれたのが、名言集『絶望手帖』(青幻舎)だ▼たとえば、歌人・枡野浩一さんが小説『ショートソング』の登場人物に詠ませた一首。<手荷物の重みを命綱にして通過電車を見送っている>▼あるいは、心理学を学びながら自殺防止の活動をしている学生の指摘。<「今年も自殺者3万人」っていうけど、去年の3万人とは違う3万人っていうことの重さに、みんな本当に気づいてるのだろうか>▼わが国の昨年の自殺者は警察庁の集計(速報値)によると、二万一千七百六十四人。かつて年間三万人を超え続けていたが、二〇一二年に二万人台となり、昨年は二十二年ぶりの「低水準」だったという▼しかし、それでも「去年の二万人とは違う二万人」が自ら命を絶ち続けている現状がある。仕事で追い詰められ、学校でいじめに遭い、「死にたい」と裏に張り付いている「生きたい」が、はがれ落ちてしまっているのだ▼忘れてはならぬ言葉がある。娘まつりさんを過労自殺で失った高橋幸美(ゆきみ)さんが、絶望の中から絞り出したひと言、「命より大切な仕事はない」。命より大切な会社も学校も、どこにもありはしないのだ。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】

PR情報