映画『虐殺器官』ネタバレ感想・評価
あらすじ:開発途上にある国々で頻発する紛争や虐殺の背後に存在する、ジョン・ポールという謎に包まれた男。アメリカ軍の特殊部隊大尉クラヴィス・シェパードは特殊暗殺部隊を率いて、彼の行方を追跡していく。(シネマトゥデイ)
製作国:日本 上映時間:115分 製作年:2015年
原作:伊藤計劃 監督:村瀬修功 キャラクター原案:redjuice
キャスト(声の出演):中村悠一 / 三上哲 / 石川界人 / 梶裕貴 / 小林沙苗 / 大塚明夫 / 櫻井孝宏 等
上映館:「虐殺器官」の映画館(上映館)を検索 - 映画.com
どうも、アニメに疎いアバウト男です!
今回観て来たのはアニメーション映画【虐殺器官】!本屋でやたら陳列されてる表紙を見かけたことは覚えてて、原作小説の存在はなんとなく知っていたけど未読。
単純にエグそうな内容を想像させる『虐殺器官』というタイトルのみに惹かれて、特に前情報を入れずに観て来ました。今回もそれなりにネタバレしています。
タイトルの割には意外と普通!?
先に率直な感想から言うと、
テレビのスペシャルでやってたら
うん、まぁまぁ面白かった!
と満足出来るようなレベルの作品でした。
言い方はマイルドにしたけど、要は映画館で観なくてもイイかなと言った印象。原作ファン以外は別に行かなくてもイイんじゃないかな?個人的にはつまらなくは無いけど、面白い訳でもなく『普通』...
なので「とりあえずオススメ!」ってテンションじゃないのだけ察してください。これならフル3DCGアニメ【GANTZ:O】の方がよっぽど見応えがあった!
9.11のテロを経験し『自由』の代わりにテクノロジーによる徹底したセキュリティ強化&管理体制により、テロの脅威をから解き放たれ『安心』を手にした近未来のアメリカが舞台。その特徴的な世界観は面白いと思うけど、話の内容は結構シンプル。
世界各地で紛争や虐殺が起こる背後には必ずジョン・ポールという謎の男がいて、リーダーのクラヴィス率いる殺しを認められたアメリカ軍の『特殊暗殺部隊』がジョン・ポールを追い、紛争を食い止めようとする話。
ジョン・ポールを辿るためにキーマンとなるルツィアという美女に接触するクラヴィス。徐々に彼女に惹かれて行き、ジョン・ポールが何のために紛争を誘発し続けているのか?真相が明かされるとクラヴィスは政府やアメリカ軍・国のシステムに疑問を持ち始める。
パッと思い出せないけど『巨悪の存在に心酔しているファムファタルに惹かれのめり込む主人公、そして巨悪かと思っていた存在にも、実はそれなりの...』と言った話の内容は、過去に2〜3回遭遇したことがある気がしてさほど目新しさは感じない。
劇中、言語学者でもあるジョン・ポールや、その教え子のルツィアとの会話がやたら文学的というか哲学的というか、難しい言葉や言い回しが多く出てくるので、いまいちスッと飲み込み辛かったりもする。
それが頭良さ気で、考えられてる風にも見えるし、別に厳密じゃなくても何となく言わんとしている事が分れば、なんとなくで十分楽しめる一作。
なので、やはり活字として小説で物語を噛み締めた方が、より味わい深く楽しめる作品なんだろうなってのは観てて感じました。ところどころ『痛みを感じないようにしてる』みたいな事を『痛覚をマスキングしてる』みたいな独特な言い回しは面白い。
近未来の世界観が面白い
映像化した意義としては、SFの世界観やちょっとしたガジェットを視覚的に楽しめる点だ。
特殊暗殺部隊のメンバーは人をなんなく殺せるように感情を無くす『感情適応調整』なるものを受けていたり、戦闘中に痛みを感じないように痛覚をマスキングしてたりする。
緑色の目薬を挿せば視界に照準器が写り、隊員が見たものは全て映像として他人が見ることもできる。
そういう基本的な設定がありながら、中盤ジョン・ポールが潜伏していると思われる戦地に赴き、部隊が上空からアタックするシーンはグッと引き付けられた!
乗り込んだ隊員を飛行船から投下する棺桶みたいなポッドや、ポッドから離脱するドローンのような狙撃器、そのポッドは証拠を残さぬように一定時間経つと溶ける仕組みになっていたり、この作品ならではのSF描写を見れたは良かった。
痛覚をマスキングしていることで体が一部吹き飛んでいても戦える無残な戦闘シーンも、グロを期待していただけあって、それはそれで良かったかな。
唇の動きを読み取ってメールが打てたり、マシンに使われている筋繊維は養殖されたイルカや鯨の筋繊維なんだとか、ランニングの際に設定した目標タイムが自身の姿で映像化され、その映像化された自分と競争するとか、
そう遠くない未来に実現しそうなガジェット然りテクノロジー描写もあって興味深かった。
本能を呼び覚ます言葉
この作品の核の部分でもある、ジョン・ポールはどうして各地で紛争や虐殺を引き起こせるのか?という事なんだど、これが言語学者であるジョンが何の捻りもなくまんま辿りついた『言葉によるコントロール』だった。
これはポスターにも書かれているので、ネタバレって事でも無いんだろうけど。
紛争や虐殺が起こる予兆として『ある言葉』がよく使われてるという事に気付いたジョンは統計的にその言葉を導き出した。その言葉は人の良心を司る脳の機能を弱め、人間が元々持っていて日頃制御している殺戮本能を引き起こす効果があった。
確かにこれは面白い設定。マインドコントロールや刷り込みの類なんだろうけど、そんな人間の良心や抑制のネジを馬鹿にしちゃう言葉がもしもあったら怖いなと。
【キングスマン】で見られた音楽を聞かせるとみんな凶暴化するとか、黒沢清監督作の【CURE キュア】なんかを思い出したり。間も無く公開されるスティーブン・キング原作の映画【セル】も、携帯電話によってゾンビのように人々が暴徒化する話で、これにもどことなく通じる。
現実ではAmazonで見た商品がオススメ商品として広告で表示されたり、Googleが個人情報を管理し把握されてる時代。
もしかしたら今もメディアに紛れ込まされた『言葉』に、僕らも無意識に誘導し操作されているのかもしれない。今のネット時代なら拡散なんて余裕だろうし。
不満点、特にキャラクーデザイン
不満点もいくつかあって。
特に本作は、作画っていうのかな?キャラクターデザインがイマイチでした!絵としては良い意味でアクがなく見やすいタッチではあるんだけど、人の描き分けがめちゃくちゃ弱くて幅が狭い。
この作品、イケメンっていうか良い顔した男はみんな同じ顔に見えます!これは僕のアニメリテラシーが弱いだけなのかもしれないけど。
隊員の顔はみんなイケメンで似てて、髪型・肌の色・声の違いで見極めるなければならなし、ヘルメットをかぶってると余計に分かり難い。一応ヘルメットの内側の色で区別できるように配慮はしてるけどあんまり効果的じゃない。
政府や軍のジジイなんかは正直見分けがつかない。「これってあの人だよな?」と同一人物なのか単に似ている人なの心配になる。
それに加えて、このあっさりとしたタッチが肝心であるグロ描写をだいぶヌルくしている!逆に『子供さえ平気で撃ち殺す』内容が内容なだけにマイルドに見せるって狙いもあるんだようけど。せっかく『虐殺』を扱う内容なのに、これは勿体無く感じました。振り切るなら振り切るで、結局これだけマイルドでもR15になってるんだから。
あとは、戦闘がない序盤の話のタルさとか、暗い画面が続くシーンなんかは眠くなるし、クラヴィスがルツィアに惹かれるまでが早過ぎだったり、
ジョンが紛争を起こす理由も色々それっぽい言葉をつらつら並べられて、納得できるような出来ないような。原作を読んでいる人の方がこの辺は入ってくるんだろうな。
あとどうしても思ってしまうのは、
これこそ実写で観たい!
SFの世界観だったり残虐的なゴアシーン含め、今回のアニメだとかなりヌルく見えてしまったので、是非とも実写で観てみたいな。
単なる『吹き替え』と違ってクラヴィスとかジョン・ポールと言った名前の外国人が日本語でしゃべってるのも若干違和感あったし、日本の原作小説をハリウッドで実写した化トム・クルーズ主演【オール・ユー・ニード・イズ・キル】みたいなスタンスで、映像化される事を願っています!
決して難しい作品じゃないと思うし。日本での実写化はチープになるだけなので、やめてあげてください!
まとめ
評価:★★★ 普通に楽しめました。
ぶっちゃけ原作のファン以外はレンタルで良いんじゃ無いかな?【君の名は。】とか【この世界の片隅に】にほど見終わった直後「これ面白かった〜!」ってオススメして回りたい気分にもならなかったので。いや〜、この作品実写だと楽しいだろうな〜!
『ノイタミナ』系列でいうと【PSYCHO-PASS】は楽しんだクチなので、エンディングをのEGOISTが歌う主題歌『リローデット』は作品の質感ともマッチしていたし、締めとしては良かった!
[ 予告編 ]
『EGOIST/リローテッド』の期間限定ムービーも貼って置きます
関連&オススメ作品!
虐殺器官
CURE キュア
GANTZ:O