ハットリの玉せん
 愛知県名古屋市中川区

名古屋の子供はこれで育った!?
玉せんに涙もちょちょぎれっ

小学校の近くにあるお店といえば文房具&駄菓子を扱う店ではないだろうか。今はどうだか知らないけど、僕の子供の頃は駄菓子屋は学校帰りの社交場だった。先生が「寄り道はいけません」なんて言っても、爽やかに「はーい」と答えつつ、禁断の園を堪能したものだ。リリアン、型抜き、粘土細工(カタ屋)の話題だけでたっぷり一晩酒を飲み交わせる同世代の方、きっと多いのでは?
今回はそんな小学校前のお店の話。別ページで紹介している桃屋の調理パンと同様の取材で知った店だった。いや、正確には名古屋で何かないかと探していたらみかんやの玉せんという名前が出てきた。しかし行ってみたら、ブティックらしき別の店しか見当たらない。聞いてみたら閉店・・・。そこで第2候補として訪ねたのが、出版社の現地営業マンが勧めてくれたハットリさん。その後、取材の下調べをしていくと、心臓病&ネット仲間の酒飲みTZKさんのお子さんも行ったことがある店だと判明。縁ですねー。
早速突撃しますと、僕らの世代が思い描く通りの、小学校前の駄菓子屋ってやつです。もちろん立派な看板なんてありません。飾り気のない造り。いいです! よすぎます!!
店に入ると床は土間っぽい感じのコンクリート。そして年季の入った茶褐色の木製長椅子と、小さな鉄板台。鉄板の端にはやかんなんか置いてあって、もう涙が出そうなほどの昭和レトロ色満載。
店を切り盛りしているのは服部のお婆ちゃん。(見た目はおばちゃん、お母さんなのかもしれないけど、お孫さんがいるというので、やっぱりお婆ちゃんで書かせてもらいます)客の注文が入ると慣れた手つきで玉せんを作ります。これがまた、いぶし銀の手さばきなのですよ。いえね、なんてことのない作業のはずなんだけど、マイペースでゆっくり、どこかぎこちなくも見えるし、職人技にも見えるとでもいおうか、なぜかじっと黙って見ていたくなる・・・。
ちなみに玉せんというのは、玉子とえびせんべいのミックスのこと。知多半島ではえびせんべいはとてもポピュラーなおやつなのだ。
作り方はまず、玉子を鉄板で焼く。ほどよく火が通りかけたところにえびせんべいをペタンと被せ、頃合を見計らって返し、玉子焼きの部分に独自のソースや青海苔なんかをかけてふたつに追ってできあがり。ハットリさんではヤキソバ入りが人気のようで、こちらは最初にやきそばをジューと焼いてから前述の作業になり、最後の玉子焼きの上にヤキソバを乗せる。
食べ方にも工夫がありまして、この玉せんを普通に持ってかぶりつくと、必ず服か手を汚します。なので慣れた子供たちは斜に構える独特のポーズで食べている。流石です!
名古屋に行くとつい足を運んでしまうこのお店。お婆ちゃんもお元気でいつまでも焼いていて欲しいなーって思っちゃいます。

*写真や価格は05年5月 交通新聞社「旅の手帖」取材時

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