【2月5日 AFP】フランス大統領選の無所属候補で世論調査で高い支持率を得ているエマニュエル・マクロン（Emmanuel Macron）前経済相（39）が4日、中部リヨン（Lyon）で選挙集会を開き、分裂したフランスを団結させると力説して数千人の支持者から喝采を浴びた。

　投資銀行出身のマクロン氏の人気はこの数週間でうなぎ登りだ。最新の世論調査結果も5月7日の仏大統領選決選投票はマクロン氏と極右政党「国民戦線（FN）」のマリーヌ・ルペン（Marine Le Pen）党首との一騎打ちになると示唆しているが、マクロン氏はルペン氏に1日先駆けて選挙集会を行うかたちとなった。

　マクロン氏は、左派と右派に分かれてきたフランス政治の伝統を超えた中道を行く唯一の候補は自分だとし「左や右に意味はないとか、両者は同じだなどと言うつもりはない。しかし、こうした区別が障壁になってはいないだろうか」と聴衆に問いかけ、「あまりに長いこと分断が広がり続けてきた2つのフランスを和解させたい」と訴えた。

　フランソワ・オランド（Francois Hollande）大統領の社会党政権で経済相を務めながら昨年8月に辞任したマクロン氏は、この日の演説が仏大統領選に向けた本格的な選挙運動のスタートとなった。自らが率いる中道政治運動「前進（En Marche）」の支持が上昇中なうえ、左派陣営の予備選決選投票で選ばれた社会党の大統領選候補ブノワ・アモン（Benoit Hamon）前教育相（49）は伝統的左派であることから、中道層の支持がマクロン氏に集まるとの期待を高めている。

　さらに大統領選の最有力候補としてみられていた右派・共和党のフランソワ・フィヨン（Francois Fillon）元首相（62）に、勤務実態のない仕事で自身の家族に公金から総額約100万ユーロ（約1億2000万円）の給与を支払っていた疑惑が浮上したことも、マクロン氏にとって有利に働いている。

■マクロン氏に希望託す支持者たち

　英国は欧州連合（EU）離脱を決め、米国ではドナルド・トランプ（Donald Trump）氏が大統領に当選するなど、同盟国におけるポピュリズム（大衆迎合主義）がフランス大統領選にも影を落とすなか、マクロン氏の支持者らはフランスが必要とする斬新な候補は同氏だけだと期待する。

　マクロン氏を支持する49歳男性は「今日よりも明日が悪くなることはないと明言している候補は彼だけだ。私たちが直面している変化は全く悲観的なものばかりではないと言ってくれる」と語った。

　63歳の元教師の女性も「以前は社会党に投票していたが、夫はかねてから右と左という分断を乗り越えなければいけないと言っていた。そしてマクロン氏のおかげで私もそう信じるようになった」とAFPに語った。

　その一方でマクロン氏に懐疑的な人々は、同氏には公職選挙の経験がなく公約も説明不足だなどと批判している。(c)AFP/Beatrice LE BOHEC