拝啓、JASRAC殿。
 
 
寒の入りとなり、冷気がひとしお厳しくなってきましたが、いかがお過ごしでしょうか?

この度は、ヤマハや河合楽器製作所などが手がける音楽教室での演奏について著作権料を徴収する方針を固めていただき、誠にありがとうございます。

今回、貴殿が固められた方針に関しては個人的には承服しかねる部分もあるのですが、
今回のアクション全体を通しては、とても感謝しております。


というのも…(少しだけ、私の話をさせていただきます)。


私個人的には、文化の発展に寄与することが、そこに携わる人間の務めだと考えております。

その上で、
私は先日、絵本をWeb上で"のみ"無料公開してみました。

入り口がたとえ無料であろうと、絵本に触れる子達が増えれば、最終的には絵本業界に還元されであろうという考えからです。
紙の絵本を買いたいと思ってくださる人や、
絵本の有料イベント等に足を運びたいと思ってくださる人が出てきてくれるのでは?と。

逆に、入り口でお金を徴収することで、絵本から人が離れてしまうことこそが、絵本に携わるクリエイターにとっては最大の損失だと思い、『お金の奴隷解放宣言』と題し、絵本の導入部分(子供と絵本の出会い部分)を無料化しました。

ところが、世間の皆様は、それを許さず、
「無料とは何事だ!」
「市場破壊だ!」
「クリエイターにお金が落ちなくなる!」
の大合唱。
私のブログは、燃えに燃えました。


そんな矢先、
貴殿が颯爽と現れ、今回の方針(音楽教室から著作権料を徴収)を発表してくださいました。

途端、世間の皆様の矛先は貴殿に向き、
「お金を取るとは何事だ!」
「市場崩壊だー!」
「クリエイターにお金が落ちなくなる!」
の大合唱。
もはや『輪唱』と呼んだ方がいいかもしれません。

子供と音楽との接地面積が減れば、CDを買おうと思う人達が減るし、音楽ライブに足を運ぼうと思う人達が減るだろうという言い分です。

「入り口がたとえ無料であろうと、音楽に触れる子達が増えれば、最終的には音楽業界に還元されであろう」と世間は抗議の声を上げたのです。
今度は世間の皆様が貴殿に対し、お金の奴隷解放宣言を叫んだのです。

世間の皆様が貴殿にぶつけた考えは、私が絵本をWeb上で無料公開した時とソックリそのままで、おかげで数日間続いていた私のブログの炎が鎮火しました。

世間の皆様の手のひら返し感は凄まじいものがありますが、少なくともネット民の正義は正論ではなく《皆が叩いているから叩く》なので、この辺りは御容赦ください。


私としましては、今回、こうして身体を張って炎を引き取っていただき、感謝の気持ちでいっぱいです。
厚く心より御礼申し上げます。

炎上中は心ない言葉もたくさん飛んできます。
今ごろは、さぞかし地獄的状況でしょう。
日本一、お察しいたします。

ただ、過去16年間、週4で信頼と実績の炎上を繰り返している私から申し上げますと、一度や二度の炎上だと気持ちが沈んでしまうこともあるかもしれませんが、燃え上がっている日の方が多くなってくると、寒冷地の『暖炉』のような扱いに変わり、「そもそも燃えているものだ」と捉えられるようになります。

なので、
精神衛生上、一番の炎上対策は、
《炎上回数を増やすこと》だと、誠に僭越ながら、日本一の炎上王からアドバイスです。
頑張ってください。

この度は炎を引き取っていただき、本当にありがとうございました。

略儀ながら、書中をもちまして御礼とさせていただきます。




2017年2月5日
西野亮廣(キングコング)


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