警察犬危機 初の1ケタ
◇10年前41頭→今年6頭、指導員の高齢化・手当ネック
行方不明者の捜索などで活躍する県警の嘱託警察犬が減少している。10年前は41頭だったが、以後減少を続け、今年は統計が残る2001年以降で初めて1ケタ台の6頭になった。県警は「捜査、捜索に支障は出ていないが、機動性などに関しては不安」と危機感を募らせている。(苅谷俊岐)
嘱託警察犬は、市民がボランティアで育て、県警が開く競技会で一定の能力が認められると、警察犬として委託される。主な活動分野は、臭いをかぎ分けて犯人を追跡するなどの犯罪捜査と、行方不明者の捜索だ。
昨年は県内に12頭いたものの、病気などで7頭が死んだ。今年2頭が新たに登録されたが、その後、さらに1頭が死んだため、現在は6頭にとどまる。うち5頭は徳島市内の訓練所などで管理されており、県西部などで出動要請があれば、現場への到着に1時間かかることもあるという。
捜査、捜索には、飼い主である指導員が犬とペアで動くことが一般的だが、現在、指導員の半数以上が50歳以上。体調不良などで出動できないことも多く、他の地域にいる訓練士などとペアを組んで動くこともあるという。
指導員の高齢化の理由の一つが、一般的に警察犬の育成には金銭面と時間に一定の余裕が必要とされ、なり手が少ないこと。飼育・訓練費には月6万円以上かかると言われ、競技会などへ出場する時間も確保しなければならない。
そこで、県警は今年度から、指導員に毎月支給する飼育報奨金を昨年度までの2000円から3000円に増額した。出動に応じて「出動の謝金」も出しているが、県嘱託警察犬指導員会の武市次信会長(73)は「これだけではもちろん生活していけない。負担を抱えて指導員として頑張っている人を見るとかわいそう」とつぶやく。
DNA捜査の進歩もあり、5年ほど前までは年5件以上を数えていた犯罪捜査での出動が、昨年はゼロだったが、行方不明者の捜索出動は24件とニーズは高い。昨年9月、つるぎ町内の山中で女性が行方不明になった事案では、3時間以上の捜索でも女性は見つからず、夜になって捜索を一時打ち切ったが、翌朝投入された警察犬は約20分で発見した。
県警鑑識課は「今後、指導員がさらに高齢化し、嘱託警察犬の数が減れば、こうした行方不明者捜索にも支障が出るかもしれない」と懸念する。県警が独自に警察犬を飼育・管理する方法もあるが、財政的な問題で踏み切れていない。
武市会長は「安定して警察犬制度を続けていくためには、これまで以上に指導員への援助など、抜本的な改革が必要」と話している。
2013年09月04日 22時55分
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