こんにちは!d:matcha Kyoto magazineのTakeshiです。
今回は「香料」についての記事を「無香料・完全無添加のブレンドティー」を売っているお茶屋の目線で書きました。
というのも、
「d:matcha Kyotoでは無香料のお茶を売ってるけど、香料って体に悪いものなの?」と聞かれることがあったんですね。
我々d:matcha Kyotoの商品は、全ての商品で香料をはじめとした添加物を一切用いていませんが、それは「香料が体に悪いから」使用していないわけではありません。そもそも香料が体に悪いものであれば、国が使用を許可しないでしょう。
そのため、
①香料についての理解を深める
②そのうえでなぜ我々が無香料で商品を販売しているのか
について伝えるために、記事をしたためました。
ちなみに私は今はお茶屋をやっていますが、昔は某大学の農学部にて学んでいた過去を持ちます。また、本記事執筆にあたり、政府や関係団体のサイトを閲覧し、京都市の関係機関・厚生労働省への取材を実施したうえで記事を執筆しています。正確性・公平性を担保するために長くなってしまいましたが、わかりやすく皆様にご説明できれば幸いです!
※また、各事業者の方がこちらの記事を読まれることもあるかと思いますが、実際の食品表示についてはご自身や、お住まいの行政に問い合わせ・確認をしたうえで表示されることを強くオススメします。
農学部の大学生だった私。頭がパイナップルのようになっていますが、これは沖縄のパイナップル農家のもとで住み込みで働いていた時の写真です。
①香料についての理解を深める。
無香料とは、を知るために「香料」を知る
無香料、とはシンプルに「香料を使っていない」ことです。
そのため、原材料名に「香料」と記載がない商品をえらべば、それは無香料です。
・・・とこれで説明が終わってしまってはいけないので、無香料についての話をする前に、そもそも「香料」とは何なのかを解説していきましょう。
香料とは?
まず手始めにWikipediaから引用すると、 香料 - Wikipedia
香料(こうりょう、flavor)は、食品に香りと味の一部を付与する食品添加物(フレーバー)と、食品以外のものに香りを付けるフレグランス(香粧品香料)に大別される。
一般に香料は、様々な植物や一部の動物から抽出された天然香料(てんねんこうりょう)、あるいは化学的に合成された合成香料(ごうせいこうりょう)を多数調合して作られる。これらはフレーバー、フレグランスにかかわらず調合香料(ちょうごうこうりょう)と呼ばれる。
とあります。
・・文字だとわかりにくいので、図にするとこういう言葉の整理となります。
香料の役割の違い
具体的にいうと、食品添加物(≒フレーバー)というのが食品の原材料表示に書かれている「香料」と呼ばれるものですね。
例えば、我が家は非常食用にカップラーメンを常備していますが・・・
こんな感じで原材料に「香料」と表記されています。
一方、今回は深堀りしませんが、化粧品や芳香剤などで使用されている「香料」が「フレグランス(香粧品香料)と呼ばれるものです。私は日ごろ化粧をしないので手元にありませんが、たまたまCMをやっていた化粧品のラベル画像を検索してみると・・
こちらも食品と同じく「香料」と記載されています。(ここからお借りしました)
昨今は香料の発展は目覚ましく、例えばトイレの芳香剤から、フレッシュなレモンなど果物の香りがすることがありますね。
※個人的にはトイレから香る香りと、食品から香る香りが似ているのはちょっとなあと思うので、芳香剤などは無臭タイプを選ぶようにしています。
香料の原材料の違い
次に、原材料の違いをみていきましょう。大きくわけて「天然香料」と「合成香料」に分けられます。これは言葉からもイメージがわかりやすく、
・天然香料(=植物や一部の動物から抽出されたもの)
・合成香料(=化学的に合成されたもの)
になります。
天然香料の特徴
「天然香料」呼ばれるものは、国のルールによって定められています。細かい話ですが、食品衛生法という法律の中で、
「この法律で天然香料とは、動植物から得られた物又はその混合物で、食品の着香の目的で使用される添加物をいう。」
という定義が決まっており、その物質について定められています。
※そのリストについて見てみたい、という熱心な方はこちら。
ここで要注意:「天然香料」とは表示できない!?
それでは「天然香料」が使用された食品を探すには「天然香料 食品名」で検索すればいいじゃん、と思った方もいるでしょう。しかし、その方法には落とし穴があります。実は、原材料の表示には「天然香料」と記載することはできないのです。
※詳しく知りたい人は、下記リンクの2(3)その他 アを読んでみてください。添加物にそもそも「天然」またはこれに類する表現をしてはいけないと定められています。
厚生省行政情報-通知-食品衛生法に基づく添加物の表示等について
天然香料を使っているかどうかを判断するのは難しい
実は、企業が販売する商品の表示には、天然由来の物質をつかった香料を用いている場合でも、合成香料だけの場合でも、一括して「香料」とだけ記載することができるのです。また、ややこしいのですが、天然成分由来の香料を用いている場合でも「香料」とだけ書かれていることがあります。
参考:食品添加物の表示方法|「食品衛生の窓」東京都福祉保健局
図解すると、こういうことです。
中には、天然香料が含まれていることがわかるケースも
上記図の(※)の中に記載しましたが、場合によっては「天然香料」を香料に使用していることを発見できる場合もあります。
具体的な例ですが「コンビニで買える美味しいアイスクリーム」といえばハーゲンダッツですが、そのラベルを見ると・・・
「バニラ香料」と記載があります。これは「天然のバニラ」を香料の原料に含んでいる香料だ、という表示なのです。その他にも例えば「オレンジ香料」などと、由来となっている天然の材料を記載している場合は、天然香料が含まれている可能性があります。
※ちなみに、ハーゲンダッツさんに気になったので電話させて頂いたのですが、ハーゲンダッツは「香料」とだけ書いている場合でも、すべて天然素材から抽出した香料を用いているようです。さすが高級アイスクリーム!また、ハーゲンダッツにとってバニラは特別な香りなので、あえてバニラだけは「バニラ香料」と書いている、というお答えでした。
注:バニラの香りはバニラビーンズという豆の一種から取れます。高級なバニラを食べると、黒い粒粒が入っていることがありますが、あれがバニラビーンズです。
合成香料の特徴
次に、合成香料について解説します。
合成香料はその名前の通り、化学的に合成された物質から作られた香料です。
こちらのHPに詳しく記載がありますが、主な材料は石油・パルプ工業から入手できる化合物です。
原料は、石油化学工業や石炭化学工業、パルプ工業などから大量に入手できる化合物などですが、香り物質を得ることさえできれば原料に制限はありません。
合成香料ですが、天然香料と比べたときのメリットは「安定して生産できること」です。
合成香料は、産地や気象状況によって香りやコストが異なる天然香料に比べて品質のばらつきがなく、大量生産で安価で安定した供給ができます。合成香料の出現で、それまで上流階級に限られていた香水やオーデコロンを市民が日常的に楽しむことができるようになりました。
天然香料は、文字通り天然の素材を用いて作られるために、季節や収穫の多少による変動によって生産量が左右され、値段にも大きな影響がでます。そのため時には非常に高価になってしまうことも。
安定的に工場からつくられる化合物をベースにつくられる合成香料は、天然香料と比べると非常に安い値段で入手することが出来ます。
天然香料と合成香料は、化学式レベルでみたら同じもの?
ここで、天然香料と合成香料はどう違うのか、ということを解説すると・・・
「(ほとんどの香料が)化学式レベルでみたら同じもの」
となります。
上記ページを参考にさせていただきましたが、
合成香料は、化学的構造の面からみると、ほとんどが天然香料物質か食品成分と同一なものです。たとえば、バニラ豆の成分としてのバニリンも木材のリグニンを原料に合成されたバニリンも、バニリンという物質としてまったく違いがありません。
図にするとこういうことです。
結局抽出されて口に入るものは、同じものである、と。
このような合成香料のことは『ネイチャーアイデンティカル』(可食性の天然物に含まれている成分と同一の化学構造のもの)と呼び、食品に使用されている香料はほとんどがこちらのものであるそうです。
香料の原料 | 日本香料工業会 - Japan Flavor and Frangrance Materials Association -
但し、中には『アーティフィシャル』(可食性の天然物にはまだ見出せていないが安全性が確認されているもの)と呼ばれるものもあり、自然界では見つけられていないけど安全だから使用している、というものがあるそうです。
一方、食品香料として用いられるもののほとんどは『ネイチャーアイデンティカル』(可食性の天然物に含まれている成分と同一の化学構造のもの)ですが、『アーティフィシャル』(可食性の天然物にはまだ見出せていないが安全性が確認されているもの)には香料物質として有効性の高いものがあります。なお合成香料は、132品目と18の類が「食品衛生法施行規則別表第1」の約400の指定添加物のなかで記載されています。
結局、合成香料は体に悪いもの?使っていると身体に悪いの?
合成香料について安全性については念入りに検査をされており、使用していい量が決められています。
こちらのページに詳しいですが、要は
「毎日摂取しても健康を損なうおそれのない一日許容摂取量(ADI)」
というのを定めて、それに沿った形で各事業者が香料を使用しているために、健康上の身体影響はない、ということです。
ちなみに、非常に細かい話ですが・・・上記サイトの中で
途中までは主語が「食品香料」になっているのに、最後だけ「食品添加物」になっているのにお気づきでしょうか?実は、こちらのサイトの中では、「実際に含まれている食品添加物の量が基準値を大幅に下回り~」と記載されていますが、この調査の中で「食品添加物の一日摂取量の調査」をしている項目の中に、香料は含まれていないのです。
マーケットバスケット方式による年齢層別食品添加物の一日摂取量の調査 |厚生労働省
(※甘味料や酸化防止剤、保存料などの調査はしているが「香料」は項目にない)
これはどうしてだろう?ということが気になったので、厚生労働省に電話して問い合わせてみました。
そこで、担当する課の方に教えて頂いたのは、
- もともと食品添加物全般に「許容一日摂取量」(ADI)というのを定めており、食品事業者はこれに沿って食品製造を行うこととなっている。
- そのADIを超えないものが流通していることが前提だが、その実態を調査する意味合いで「一日摂取量調査」が行われている。調査結果では、一日摂取量の基準値より相当低い数値(0.1%にも満たない数値)が出ている。
- 香料については、もともと食品に使用する重量が非常に少ないため、安全上の懸念がないと考えられるために検査を行っていない。
(他にも、検査をしてもそもそも僅少すぎるので検出ができないんじゃないか、ということや、全ての食品添加物について検査ができるわけではなく、優先順位がある、ということも仰っていました) - 香料について、健康被害があったという声は聞いたことがない。
ということでした。
香料という物質は、使う際には非常に僅少量であり、かつ健康に影響がないと考えられるから、特段実態の調査はしていないということのようです。
ここは、意見が分かれるところかもしれません。私個人の考え方ですが、100%の安全を追及するにはとんでもないコストがかかってしまい現実的ではないし、可能性から考えて僅少の、それも計測できるかどうかわからない物質をお金かけて調査する必要はないと思います。(それより可能性の高い、他食品添加物などを調査するほうが良い)それでも「安心」できないかたは、安全と安心の違いを心にとめてみるとよいと思います(参照記事)
健康に影響がないなら、香料を嫌がる理由にはどんなものがあるの?
というわけで、香料自体に健康への悪影響はないですが、実際香料を嫌がる人はどんな理由があるのでしょうか?
先ほどから紹介している日本香料工業会のページの中にも記載がありますが、最もわかりやすい理由は「使用しすぎると不快に」なるというものでしょう。香料は、あくまで自然の模倣なので、自然に存在する量を超えると不快となり、食品の価値を失ってしまいます。
実際に、我々d:matcha Kyotoのブレンドティー(d:ashi Tea)はすべて無香料・完全無添加で製造していますが、こちらに寄せられたお客様の声の一部を紹介します。
「華やかな香りだけど、スッキリ飲みやすくて美味しかったです!香料じゃないのも良かったな〜♪贈りものにも良さそうですね!」(30代・女性)
「子どもに香料が強いものを飲ませたくないので、ぴったりでした!」(30代・女性)
(写メ付きで頂きました(´・ω・)※掲載にあたり許可は頂いています)
「妊娠中は香が強いものを避けたいので、これなら飲めると思って購入しました。香料をつかったフレーバーティーとは違った、マイルドな香に癒されています。」(20代・女性)
「家族にアトピーやアレルギーなどを持つ人への贈り物には気をつかうので、できるだけ余計なものが入らないものを選びますが、これは余計なものが入っていないのでよいと思う購入させて頂きました」(40代・女性)
女性の方からの声がほとんどですね。
・香りに敏感な妊娠中の方が飲む。
・妊婦の方、子どもがいる方への贈り物に。
・子どもに飲ませるときに香料が強いものを避けたい。
・人に贈るときへ気を使わなくていい。
という理由が多いです。
(今までに弊社に寄せられた声の中でも、健康被害を避けるために~という理由はあまり聞いたことはありません。)
あくまで、香りが強い/弱い(人工的かどうか)や、美味しい/美味しくないや、といった観点、まとめてしまえば「好き・嫌い」で、無香料でもフルーツや野菜の香り/味がついたブレンドティーをお求め頂いていることが多いようです。
①のまとめ:正しい知識をもって「香料」がついた商品を判断しよう
というわけで、ここまでをまとめますと、
・「無香料」の食品を選ぶには、原材料名に「香料」と書かれていないものを選べばOK。
・「天然香料」で検索しても、天然成分由来の香料が使っている食品は探せない。
・天然香料と合成香料は成分にほぼ違いはない(一部、自然界には見つけられない合成香料もある)。
・健康上の理由で、香料を避ける必要はない。
(「国がいうことは全く信じられない!」という方も時々いらっしゃるので、そのあたりは価値観だと思いますが。)
・無香料の商品を選ぶ理由は「美味しい/美味しくない」などの好き嫌いの観点、もしくは「妊娠中の方へのや贈り物として使いやすい」ということが多い。
となります。
②d:matcha Kyotoが無香料の商品にこだわる理由
我々は、会社のミッションとして
「健康に良く、美味しいものを」と掲げています。もちろん日本茶自体が健康に良い成分をたっぷり含んでいるために販売しているわけですが、近年では日本茶の伝統的な「煎茶」「抹茶」のようなシンプルな美味しさにとどまらず、日本茶の可能性を広げるために、更なる味の発展をしてもよいと考えています。
その考えを体現しているのが、d:ashi Tea(ダシティー)です。
日本古来の「出汁(だし)」にヒントを得て、新鮮なフルーツ/野菜をドライチップにすることで、茶葉とともに味わい・香り・栄養成分を抽出、日本茶に加える方法を生み出しました。
まるで煮干し・鰹節からエキス・旨味・香りを抽出するように、ドライフルーツから成分や香りを抽出すれば、自然の素材だけでフレーバーティー・ブレンドティーに並ぶ商品が作れるのではないか、と考え、試行錯誤の上に販売を開始しました。
美味しい商品のために
私たちは、「香料」が健康に悪いといっているのではありません。香料を用いると「美味しい」という基準を、我々の考えでは満たせない、と考えているのです。
様々な会社がフレーバーティーを販売していますが、茶葉しか入っていないのに、本来お茶からは漂わないはずの香りや味がすること、または不自然に強くフレーバーが香ってるためにお茶が持つ香りを消してしまっていることがありました。
私たちはその味わいに違和感を覚えました。
日本茶の可能性を広げる試み自体はどんどん進めていければよいと思いますが、日本茶の味わい・良さを上から塗りつぶしてはいけない。あくまで日本茶との調和によって、日本茶の可能性を広げたい、というのが私たちのスタンスです。
そのため、私たちの考えでは人工的だろうと天然だろうと、香料を日本茶にまぶす、ということを選択できませんでした。
実際に、d:ashi Tea相当な手間暇をかけて作られています。
農家さんからフルーツ/野菜を直接仕入れ、ひとつひとつ吟味してスライス・加工。ドライフルーツをつくった後に、それを砕き・サイズを商品ごとに調整しながら茶葉とミックスし、出荷・・といった具合です。この商品は、私たちの体現したいことを表しているので、決して妥協することはありません。
-------------------
というわけで、長文になってしまいましたが、
①香料についての理解を深める。
②そのうえでなぜ我々が無香料で商品を販売しているのかについて。
という記事は以上です!
最後までお付き合いいただいた読者の方がいらっしゃったら、本当にありがとうございます!ぜひぜひ想いに共感頂けましたが、シェアなりブクマなりコメントなりでご支援を頂けますと大変嬉しい限りです。
-------------------
d:matcha(ディーマッチャ)は生産スタッフが愛情をこめて作った、京都・和束町産のおいしい茶葉+お茶を美味しく淹れられる、ティーウェア・茶器を販売しています。