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橋賀 秀紀
3時間前

なんで早く搭乗したがるの? 機内には遅く入るのが有利な理由

プロが教える「旅の新常識」

 日系のエアラインに搭乗する時、おなじみの光景がある。

 グランドスタッフの搭乗のコールが近づくと、ゲート前には長蛇の列ができる。とりわけ目だつのがビジネスクラスやマイレージの上級会員の優先搭乗の列だ。50人以上ということも珍しくない。そのほとんどが日本人、多くが男性、さらにいえば中高年が多くを占める。彼らはそれがあたかも吾に与えられし特権かという雰囲気を醸し出しつつ、無表情に搭乗していく。しかし、そもそも早く搭乗することにどういう意味があるのだろうか。

 まず、大きな荷物を預けたいから早めにスペースを確保したい。それは分かる。せっかくのビジネスクラスだから少しでも早く搭乗して機内でくつろぎたい。これも理解できる。

 しかし、荷物もさほど大きくなく、エコノミークラスの場合はどうだろう?

 私は可能なかぎり最終の搭乗者近くで乗ることにしている(飛行機を遅らせるのはもちろん言語同断だから、最後の最後の客にはならない)。それは単純な理由による。最後に乗れば、機内の座席の埋まり具合が手にとるようにわかるからだ。

横になって長時間移動できる場合も

 航空会社は客が事前にアサインした席からの移動を原則禁じている。これは飛行機の離着陸のときにウェイトアンドバランスが崩れることを避けるためのものだ。たとえば力士の集団がみな最後尾にまとめて座ればバランスが危うくなるだろう(逆に左や右にかたまってもそれほど影響はないそうだ)。

 しかし、すべての座席の移動を厳しくとりしまっているわけではない。実際に離着陸時をのぞけば、席の移動を認めたり、黙認したりするケースは少なからずある。

 自分の指定した席とちがう席に移動した後、その座席番号の搭乗券を持った乗客が現れたためにすごすごと退散する人を見かける。しかし、自分が最後に搭乗した場合、かりに自分の指定された座席番号以外の席に座ったとしても、ほかの人がそこに来る可能性はほとんどない。少なくとも恥ずかしい思いはしなくてすむわけだ。

LCCのタイガーエア台湾の非常口前の座席。片道2700円ほどを払えば3席独占して横になれることもある

 先ほどふれたウェイトアンドバランスなどの関係から、かりに80%の搭乗率だったとしても、航空会社は空席を分散させることが多い。エコノミークラスの前方をほぼ満席にしているにもかかわらず、後方には空席が目立つことがしばしばあるのはそのためだ。だからエコノミークラスに搭乗する際は必ず最後尾までどのような状況になっているか確認したほうがよいだろう。

 もっともエコノミークラスの後方はキャビンで最も騒音が大きく、揺れも大きい。また、団体などもこのエリアに入ることが多いので、一つまちがえると地獄と化す可能性はある。降機の際にももちろん時間がかかるので、入国審査で時間がかかる国などの場合は不利に働く。しかし、1人で3席ないし4席を確保して横になって長時間移動できるとなると、これらのマイナス点やリスクをおぎなって余りある。

 ただし、最近の航空会社はいわゆるプレミアムエコノミー以外にも前方のシートなどをアサインする場合、課金をするケースが出てきている。この場合、シートのカバーの色が変わるなど、なんらかの目印があるはずだ。ここに移動していけないのは当然のことである。

 裏を返せば、こうした有料のシートは、最後の最後まで埋まらないケースが多い。そのために、ほかのエコノミークラスのシートとくらべると隣席が空席になる可能性が高いといえる。

 LCCなどでは機内に入ってからでも申し出て差額を払えばこれらのシートを利用できるケースが少なくない。筆者もタイガーエア台湾で羽田から台北に行く際、機内がほぼ満席にもかかわらず、非常口前の座席は3席空いているのでキャビンアテンダントに確認したところ、750台湾ドル(約2718円)を払えば移れるという。おかげで夜行のフライト中ほとんど横になって熟睡することができた。

 飛行機の座席というのは条件が一つひとつ大きく異なる。搭乗するときからすでに戦いは始まっている。そしてそれは早めに乗ればいいという単純なものでもないのだ。

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