水産庁が小型マグロ漁「自粛を」 高知県内漁師の不満噴出
高知県などで操業自粛の対象となっているマグロの小型魚(高知県内)
高知県では、小型マグロ漁を主に引き縄、さお釣りなどの沿岸漁業が担っている。水産庁は沿岸漁業を全国6ブロックに分けて管理。高知県など19都府県は「太平洋南部・瀬戸内海」に含まれ、秋から冬に漁の最盛期を迎える。「太平洋南部・瀬戸内海」ブロックの漁獲上限は、2016年7月からの1年間で243・8トン。都道府県分は「目安」として扱われ、このうち高知県は過去の実績に基づき、62・8トンとしていた。
水産庁が19都府県に「操業自粛」を要請したのは、1月17日。
水産庁などによると、三重県の漁船が三重県の操業自粛要請を無視し、2016年11~12月に小型魚52トン強を漁獲したことなどもあり、ブロック全体で上限を超えたためという。
高知県漁業管理課によると、設定期間中の県内漁獲量は1月20日現在、41・5トン。「目安」の62・8トンには、まだ余裕がある。
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高知県内の沿岸漁業は今季、12月に入って漁が良くなってきた。高知県土佐市宇佐町や安芸郡奈半利町加領郷などを中心に、小型マグロも捕れている。
「自粛要請」はそうしたさなかだった。
高知県漁協宇佐統括支所(土佐市)の井上南海男さん(52)は「年が明けてもそこそこ釣れる。ウルメが不漁の中、ヨコを『釣るな』と言われたら生活への影響は大きい」と話す。
さらに井上さんは日本海で盛んな巻き網漁を問題視する。日本海はマグロの産卵域としての可能性が高いとされているのに、大型魚の規制がないため、資源保護に影響があると考えるからだ。
「一本釣りの漁獲量は知れている。(資源を)一網打尽にする巻き網漁こそもっと規制すべきです」と井上さんは言う。
高知県安芸郡奈半利町の加領郷漁港で水揚げしている男性(85)は「多い時で1日50~60キロの漁がある。こんな釣れゆう時になぜ止めるのか」と憤る。
ヨコの魚価は1キロ当たり千数百円と他の魚種よりも高値。高知県によると、漁師によっては水揚げ高が年間で100万円を超える。高齢・零細の多い県内漁師には貴重な収入源だ。
加領郷漁港を使う男性も「生活に困る。規制するなら(政府などに)補償してもらわんと」と語気を強める。
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クロマグロの資源保護と、漁業経営。それをどう両立させるか。
高知県漁協の澳本健也組合長は「一本釣りや引き縄の自粛で、資源保護に効果があるとは思えない。それよりも、産卵前の成魚も捕ってしまう巻き網を規制すべきだ」と訴える。
自粛要請中に操業しても今は罰則がない。
これを踏まえ、高知県漁業管理課は「国の規制が始まってまだ2年。大型魚の規制も無く、(クロマグロの規制の在り方は)試行段階」と言う。その上で「将来的には(自粛要請に従わなければ)法律などによる罰則ができる可能性が高い。高知県の漁師が不利にならないように国には意見していきたい」としている。
太平洋クロマグロ
体長は最大3メートル近く、体重は300キロを超える。高級すしネタとして人気で、乱獲によって資源量は急減している。産卵能力のある親魚の量は2014年が約1万7千トンと、漁業がないと想定した資源量の約2・6%にまで減ったとされる。30キロ未満の小型魚について水産庁は2015年1月から、漁獲枠を2002年から2004年の平均漁獲量から半減させる規制を導入している。